コラム
歴史上の関西、文化的な関西、日本の宝庫
関西の歴史と伝統文化
関西地方は長い間、日本の歴史と文化の中心にありました。日本の最初の都があり、710年からは奈良に、794年から1869年頃までは京都にと遷都し、1400年の歴史があり様々な伝統文化が生き残っています。実際、2017年には日本政府は文化庁の東京から京都への移転を開始しました。これは、この地域の重要性と歴史的に貴重な文化財が根底にあるのです。日本に23か所ある世界遺産のうち6か所は関西圏内にあり、これらの場所はその歴史的価値と文化的価値から、国内推薦の早い段階で認められました。では、関西地方にあるたくさんの歴史的で文化的な場所、体験など、ほんの少し探ってみましょう。
伏見稲荷
関西の世界文化遺産
奈良の法隆寺は607年に創建され、現存する世界最古の木造建築物とされています。 象徴である高さ32mの五重の塔や、28本の巨大な柱がある本堂や正門など、境内に数多くある伽藍が世界遺産に登録されています。法隆寺と並び、奈良の東大寺や高さ15mある有名な奈良の大仏、そして669年にさかのぼり、4つの国宝建造物と4つの国宝の仏像を誇っている興福寺があります。
他にも現存する全てのお城の中でも、息をのむほど素晴らしい姫路城も関西にあるのです。
古都・京都市には金閣寺や龍安寺の石庭など、17の寺院、神社、庭園がまとめて世界遺産に登録されています。
和歌山県の高野山は神秘的な雰囲気が漂う霊山です。 仏教を学ぶには静かで理想的な場所です。かつてそこは多くの敗北した武将が追放された場所でもありました。高野山にはまた、数千の古いお墓が山頂にあり、歴史上の有名無名の武士を慰霊しています。
もう1つの世界遺産は、熊野古道です。京都と、最も神聖な伊勢神宮、そして他3つの神社をつなぐ古代の石畳参詣道です。古の曲がりくねった林道は、三重や和歌山の山々や川を越えてあり、古の巡礼者と共有する神聖的な冒険を求める旅行者に人気のあるハイキングコースです。
百舌鳥古墳群
八坂地区
熊野古道
関西のお城
関西は戦国時代、政治の中心地で、お城がいたるところに点在し、大名がその領土を守っていました。中でも国宝やユネスコ世界遺産に登録されている姫路城は、江戸時代(1603-1868)に使われた藩の軍事施設です。とてもいい状態で保存されているので、必見です。
滋賀県の琵琶湖沿いにある彦根城は、全国に5つしかない国宝に指定されているお城の1つです。京都の二条城は二の丸御殿があり、国宝と世界遺産に登録されています。二の丸御殿は1867年に最後の将軍・徳川慶喜が大政奉還の意向を表明した場所で、政権を朝廷に返上し、日本が武士の時代を終え新時代に入った歴史的な場所です。
大阪のシンボルである大阪城は、全国でもっとも高い石垣があります。周囲の櫓は一部実物ですが、天守閣は1930年代の鉄筋コンクリート製の複製であり、博物館を含む大阪城天守閣で激動の歴史を知ることができます。
福井県の丸岡城は、現存する最古の天守と言われています。伝説によると、敵が接近すると霧が現れて城を隠してしまうという、これはお城の井戸に棲んでいる大蛇の仕業だと言われています。
その他の見どころは、大阪東部にある岸和田城、三重県の伊賀上野城、亀山城、京都府の福知山城、滋賀県の長浜城、和歌山県の和歌山城、そして、あの有名なの赤穂浪士が存在した 兵庫県の赤穂城は見学リストに入れておいた方が良いでしょう。
兵庫県の竹田城や、滋賀県にある織田信長の革新的であった安土城の城跡でさえも、一見何も無いように見えますが、丹念に積み重ねられた石垣が山頂にあり、まるで日本版マチュピチュのようで、歴史ファンや観光客など多くの人を惹きつける魅力があります。
姫路城
二条城
大阪城
忍者文化
武士の象徴と言えばお城ですが、関西にはもうひとつ日本のあの有名な戦士が存在した場所でもあります。それは忍者。忍者文化の主な地域は三重県の伊賀市と名張市、そして滋賀県甲賀市です。伊賀上野城の敷地内には、希少な忍者屋敷の1つ、伊賀流忍者屋敷があります。外観は江戸時代の農民の家ように見えるのですが、内側にはからくり天井や回転する扉、落とし穴、刀隠し、秘密の部屋などがたくさんあります。忍者たちがこの屋敷を案内してくれ、各場所に隠された仕掛けや罠を説明し、実演もしてくれます。また、忍者衣装をレンタルして、忍者になりきって城や忍者屋敷を周ることができます。忍者屋敷の後ろには伊賀流の忍者博物館があり、忍者武器、忍び装束、忍び甲冑、そして巧妙に偽装した忍術に使われる道具など400点以上を展示しています。美術館の売店では、さまざまな種類のオリジナル忍者グッズ、衣装、お土産、本などを販売しています。 伊賀上野のもう一つの見どころは、忍術を世に広めようと追及している忍者団体による忍者ショーです。 手裏剣を投げたり、刀や鎖鎌などの忍具を使ったり迫力のあるデモンストレーションを見ることができます。
忍者
人気のハイキングスポットと観光地である、美しい赤目四十八滝エリアは三重県中西部の名張にあり、古の忍者修行が行われた場所だと信じられてきました。その辺りには忍者伝承の痕跡がまだあるのです。4キロあるコースで忍者を見ても驚かないでください。大人子供を問わず、ほとんどの人がこの機会に忍者衣装をレンタルします。そのほか、忍者だけでなく絶滅危惧種であるオオサンショウウオにも目を向けてみましょう。体長が1.5mもあるのです。見事な滝を見る前に、ぜひ楽しい忍者修行を試してみてください。90分の体験レッスンは忍者衣装代も込みで2,000円です。
滋賀県の甲賀市にも、数少ない忍者屋敷の一つがあります。1600年代後半に甲賀望月氏本家として建てられ、敵を混乱させるための巧妙な隠れ穴、逃げ道、秘密の天井などもあります。手入れの行きとどいた家の中には、忍具、武器、道具、巻物、書物などが展示されています。屋敷の近くには忍者体験訓練場があり、手裏剣を投げたり、弓矢やその他忍者の体験ができます。旧屋敷を運営するスタッフのほとんどは、昔活躍した甲賀武士五十三家の子孫です。
目で見て、手で触れる、京都の工芸品
京都伝統産業ふれあい館では、京都の74品目の伝統工芸品を一堂に見ることができ、体験メニューも豊富にあります。常設展、企画展の他に、熟練した地元の職人によって行われる伝統的な手工芸の実演があります。内容は定期的に変わりますが、芸者や舞子の実演や、着物のひも編み、家紋、木工品、織物、染色、漆器、象眼細工、和ろうそくの製作、陶芸、仏具などを見ることができます。
京都工房コンシェルジュは、本物の伝統工芸体験を希望する方々と職人を繋ぐ架け橋になっています。少なくとも3日前までの予約が必要ですが、このユニークな旅行体験は、昔ながらの環境の中、伝統工芸職人に出会い、学ぶ機会を提供しています。工房を訪れ、織物染めから陶器、木、竹、金属工芸品、さらには漆器まで、さまざまな体験を試してください。職人監修のもとで作った作品は、単にお土産というだけでなく、思い出に残る最高の体験になり、みやげ話にもなるものです。詳細および予約については、京都工房コンシェルジュのホームページをご覧ください。
京都伝統産業ふれあい館
関西は一流伝統芸能地域
歌舞伎の華やかな衣装、独特に誇張した演技スタイル、踊り、そして素晴らしい舞台構成が世界的に有名です。歌舞伎は1603年頃に京都近郊で発展し、その後江戸や全国に広まりました。歌舞伎は、京都・河原町にある名高い南座、または大阪・道頓堀の松竹座で見ることができます。
他には、大阪の国立文楽劇場でよく見られる文楽があります。 文楽は歌舞伎のように、伝統的な物語を伝える芸術ですが、語り手や伴奏にあわせて人形を操って行うものです。これらの人形劇は子供向けではありません。 子供たちも楽しめる大人の芸術なのです。それぞれの人形は、黒い衣装を着た3人によって操られますが、そのうち一人は顔を出しています。一人は足を操り、もう一人は体を維持して右腕を操り、主遣い人形師は左腕と頭を操ります。主遣い人形師だけが顔を見せます。公演中はこの木製の人形が生き生きとして、舞台上に人がいるようには見えず、人形のみが演じているように見えるのです。安いチケットは2,400円、より良い席は6,000円です。 公演時間と演目を確認しておくと良いでしょう。音声ガイドが用意されているので、昔の関西弁の強い訛りを理解しようとしなくても楽しむことができます。
上流武士に好まれた能は、世界最古の古典芸能とされ、日本初のユネスコ指定無形文化遺産に登録されています。14世紀からつづく、その洗練された古典芸能で使われる能面と衣装は、芸術作品そのものです。観客の想像力を刺激します。そのお面は木彫りで動くことはないですが、熟練の能楽師が身に着けると、人間の顔よりも表情豊かになるのです。あらすじや能面、人物について説明しているオンラインサイトがあり、なぜそのように動くのかも分かります。ちょっとした予習は、この上品で優美な古典を楽しむために大いに役立ちます。
関西の祭り
関西地方でも、エキサイティングで、変わった珍しい祭が開催されています。旅行のタイミングが良いと、年間を通して行われるさまざまなお祭りと重なる可能性があり、日本の豊かな文化と遺産を満喫できるでしょう。
兵庫県の姫路市で毎年10月14日と15日に行われる「灘の喧嘩まつり」は、約15万人の人出があり、関西の多くの喧嘩まつりの中で最も規模が大きく知名度のある刺激的なお祭りです。にぎやかな群衆の歓声の中、活気ある担ぎ手により3台の神輿を激しくぶつけ合います。 デモリションダービーの日本のお祭り版と考えるといいでしょう。
天神祭り
岸和田だんじり祭
毎年10月22日に平安神宮で開催される京都の「時代祭」は、京都の三大祭りの一つで、地元の人々が2kmの距離を昔の庶民、侍、大名、貴族、お姫様や皇族の衣装を身にまとい練り歩きます。 京都の1200年の歴史を祝う祭です。葵祭は9世紀に始まり、もともとは五穀豊穣を祈願する祭事でした。 毎年5月15日に行われ、平安貴族の衣装を身にまとった500人以上の人が京都御所から街の北にある2つの加茂神社まで練り歩きます。葵祭りと同じく有名な祇園祭は、6世紀後半に清めの儀式として始まりました。その名前は京都の祇園地区から取り、鎌倉時代(1185-1333)に地元の町衆が祭りを豪華な行事にするために加わりました。祇園祭は7月いっぱいかけて行われ、華やかな幕や旗などで飾られた山鉾が7月17日と24日に練り歩きます。通りは歩行者天国になり、屋台などが連なります。祭りの雰囲気に紛れるために、地元の人たちに加わったり、浴衣を着てみたりして、真の祭りを体験してみましょう!
300年続く活気のある岸和田だんじり祭は海岸沿いの城下町岸和田で開催され、普段は静かな街の34町内のチームが高さ4メートル、重さ4トンの木製の山車(だんじり)で狭い通りを猛スピードで駆け抜けます。各町内とも、巧妙な造り、素晴らしい装飾、最速のだんじりで競い合います。 コースはまっすぐな道だけでなく、数多くある曲がり角はスリル満点です。団体にはそれぞれ役割があり、綱先・綱中が山車を引っ張り、他の曳き手は曲がりくねった道を曲がれるように綱を引いてだんじりの向きを変えます。大工方がだんじりの大屋根に乗り、バランスを取りながら左右に飛び華麗に舞うのです。この祭りは年に2回行われ、9月下旬と10月中旬に開催されます。実際の祭りに参加できない場合は、だんじり会館があり、展示室で祭の歴史と伝統を概説しています。また昔のだんじりや法被が展示され、豪華な彫刻が施された山車を見ることができます。
8月12日から15日は、徳島県徳島市で、日本で最も有名で400年の歴史がある祭、阿波おどりが開催されます。地元団体の何百もの参加者が民謡に合わせて独特な踊りをしながら、何千人もの観客がいる指定観覧席の間を行き来します。通常数ヶ月前にすでに予約されているため、徳島にホテルを確保するのは、難しいでしょう。車で2時間半かかりますが、どんちゃん騒ぎをする人は大阪に泊まるべきでしょう。
大阪の天神祭は東京の神田祭や京都の祇園祭とともに、日本三大祭りのひとつです。この祭りは学問の神様、菅原道真公に捧げられ、1000年の歴史があり毎年7月24日と25日に開催されます。大阪は、大きく、せっかちで、挑戦的で親近感があることで知られています。 この祭りは大阪の典型です。大阪天満宮周辺から始まり、その後は8世紀から12世紀の伝統的な衣装を着た人たちが活気よく通りを練り歩き、龍踊りや水上薪能へと続きます。また天神祭りは世界最大の河船祭のひとつとも言われています。いくつかの船は後援者の娯楽船になったり、文楽人形や、お囃子、踊りの水上ステージになったり、他には船渡御などがあります。 最後は1時間半の、川の上に打ち上がる3,000発の花火で締めくくります。人々が花火の見えやすい見晴らしのいい場所や川岸に並び、夜空には花火、水面には篝火のある船が彩ります。
他の日本の祭りと同じく、屋台ではさまざまな食べ物やおやつがあり、祭を楽しみ、友好的な地元の人々と交流できるよう手伝ってくれます。
関西地方は歴史や文化が豊富にあります。 体験すること、その一員になるには少しの運と、勇気がいるかもしれませんが、その素晴らしい経験や思い出は一生抱くものです。
※この内容は、オリジナル英文を翻訳した文章です
Writer
クリス・グレン ライター / インバウンド観光アドバイザー
オーストラリア出身。93年より名古屋市在住。
英語と日本語を使いこなすバイリンガル ラジオDJとして活躍するほか、日本の魅力を語る外国人としてNHK「ブラタモリ」などテレビ出演も多数。オーストラリアではコピーライターとして活躍し、10,000本以上のCMを手がけた。
近年は、訪日外国人の受け入れ環境整備、地域の魅力の掘り起こしと磨き上げ、外国人目線での情報発信に関するアドバイス等を行う、インバウンド観光アドバイザーとしても活躍中。外国人のニーズやセンスにマッチした英文ライティングにも定評があり、観光関連の情報誌や自治体、DMO等の運営するWEBサイトへの執筆も多数おこなっている。
著書に「城バイリンガルガイド」(小学館)、「豪州人歴史愛好家、名城を行く」(宝島社)、「The Battle of Sekigahara」(英語版)がある。