絶景と癒しを求めて 山陰海岸ジオパークをめぐる旅

旅のはじまりに訪れるのは、日本遺産にも認定される、日本を代表する近代産業遺産「史跡・生野銀山」。天文11年（1542）に本格的な採掘が始まり、戦国英傑・織田、豊臣、徳川それぞれの直轄鉱山として栄えました。明治元年（1868）には日本初の官営鉱山となり、その後、皇室財産にもなった大鉱山です。昭和48年（1973）に閉山し、現在は当時の模様を再現した観光施設として一般公開されています。鉱石を採っていた坑道内の一部が見学コースになっており、むき出しの岩肌には鉱脈が見られるほか、採掘の作業風景を人形で再現。鉱山の近代化について深く知ることができます。また敷地内にある資料館にもぜひ立ち寄りましょう。アリの巣のように坑道が縦横無尽に広がる鉱山内の様子が一目でわかる立体模型は必見です。

山陰海岸の魅力のひとつが豊かな「食」。とりわけ目の前の海で獲れたばかりの魚介は美食の極みです。「鳥取港海鮮市場かろいち」は鳥取港直送の新鮮魚介が一年を通して豊富に揃う市場で、旬の食材がリーズナブルに買えると人気を集めています。鳥取名物のとうふちくわなども販売しているので、お土産探しも楽しめそうですね。市場内には食事処もずらりと軒を連ねています。「市場食堂 賀露幸」で名物の特選海鮮丼を昼食にいただきましょう。

昼食後は、美しい自然とスピリチュアルスポットで気分をリフレッシュ。日本に古くから伝わる神話の舞台にもなった白兎海岸を眺め、白うさぎが縁結びの神様として祀られている白兎神社に参拝、願いごとを胸の内でそっと唱えてみましょう。参道では白兎像が迎えてくれます。

次に訪ねるのは鳥取砂丘ですが、まずは「砂」を素材に使った彫刻（砂像）を展示する「鳥取砂丘 砂の美術館」でアートな時間を楽しみませんか。館内いっぱいに壮大なスケールで展示された砂像はどれもダイナミックながら精緻な造り。世界初の砂の美術館で、砂のアートを鑑賞しましょう。

アーティストの手でつくられた砂のアートを鑑賞した後は、長い年月をかけて自然がつくりあげた鳥取砂丘へ。風と砂が織りなす“奇跡の造形美”とも言われ、見る者の心を惹きつけてやみません。砂丘を歩いてみるだけでなく、ラクダに乗ったり、ハングライダーやパラグライダーなどのスカイスポーツも楽しめるなどアクティビティが充実しているのも魅力です。夕陽に輝く砂丘と海、最高のロケーションを活かしたサンセットヨガもおすすめです。

鳥取砂丘から車で約20分ほど走れば、1,200年の歴史を誇る岩井温泉に到着。1日目はこの名湯で創業150年を超える老舗の温泉宿「岩井屋」に宿泊を。山陰きっての秘湯の宿として知られる宿です。疲労回復に効能があるという湯に浸かり、日本海の幸を堪能して、旅の疲れを癒しましょう。

2日目は山陰海岸の絶景をめぐるアクティブな1日に。まず訪れたいのは、澄みきった海に白砂青松の美しい砂浜、複雑に入り組んだリアス式海岸が見事なコントラストを見せる浦富海岸です。約3,300万年前の日本列島が大陸の一部だった頃、大陸の地下でマグマが固まってできた花崗岩によりつくられた海岸で、日本海の荒波と風雪によって浸食された断崖・絶壁・洞門・奇岩の荒々しい景観が生まれました。そんな大地の歴史を伝える貴重な景観をじっくり楽しめるのが浦富海岸の絶景スポットをめぐる「浦富海岸島めぐり遊覧船」です。見どころたっぷりな約40分の船の旅へ出かけましょう。

浦富海岸から車を40分ほど走らせると、香住海岸に到着。日本海形成から現在に至るまでの地形や地質が見られる香住湾は絶好のジオスポットです。いくつもの絶景ポイントを小型のチャーター船でめぐる「かすみ海上 GEO TAXI」で、最高のジオ体験を楽しみましょう！ 下船後は海岸線をドライブ。次なる絶景を求めて「はさかり岩」「猫崎半島」を目指します。

山陰海岸でアクティブに過ごした後は、但馬の風土で育んだ極上の黒毛和牛「但馬牛」をランチでいただきましょう。城崎温泉にある但馬牛専門レストラン「いろりダイニング三國」で味わえるのは、数々の共進会でチャンピオン牛を出す香美町村岡の「上田畜産」の月10頭程度しか出荷されない牛のなかから、厳選した良いお肉だけ。環境、飼育方法、すべてにおいて愛情注いで育てた但馬牛は他の牛とは一線を画す味わいです。

城崎温泉から車で20分ほど、川沿いに現われる玄武洞公園は山陰海岸ジオパークを代表するジオスポットのひとつです。玄武洞の地形は160万年前の火山活動によってできたもので、玄武岩の節理の形や断面の模様などが中国の妖獣「玄武」を連想することから名付けられました。また玄武洞は地質学的にも世界的に貴重なスポットとして注目されています。地球の磁場が逆転していたことが発見され、地球科学の新しい扉が開かれた場所でもあるのです。まるで彫刻芸術のようにも見えるフォトジェニックな大地のデザインをじっくりと見つめてみましょう。

城崎温泉からほど近い出石は、古事記や日本書紀にも登場するほど歴史が古い町。国の重要伝統的建造物群保存地区で、関西有数のそば処としても知られています。明治34年（1901）に開館した近畿最古の芝居小屋や、明治時代に生糸を商った豪商の旧邸など、江戸時代から明治にかけての町並みは風情があり、あれこれ見ながら散策するのにぴったりです。

城崎温泉は1,300年の歴史を誇る全国的にも有名な山陰屈指の名湯です。2日目は、城崎温泉随一の老舗温泉旅館が手掛ける「城崎温泉 西村屋 ホテル招月庭」に宿泊しましょう。5万坪の広大な森林庭園に抱かれ、客室からは四季折々の風景が楽しめます。大浴場だけでなく、森の中にいるようなプライベートスパ、リラクゼーションサロンなども充実しています。夕食には但馬牛やカニなど但馬の美食をはじめ旬の山海の幸が堪能できます。

これまで見てきた荒々しくもパワフルな絶景とは一転して、3日目の山陰海岸は穏やかで情緒ある絶景の連続です。朝一番に訪れるのは久美浜湾。日本三景天橋立に似ていることから「小天橋」と呼ばれる砂州を挟んで海と隔てられた周囲28kmの潟湖です。近くで見るのもいいけれど、かぶと山展望台から一望できる久美浜湾の全景と水辺に広がる風景は一度は見ておくべき景観です。展望台まではかぶと山公園から20分ほどせまい登山道を歩くので動きやすい服装・靴がおすすめです。視界いっぱいに広がる久美浜湾の絶景を楽しみましょう！ 朝の澄んだ空気も気持ち良く、軽い運動にも最適です。

次に訪れるのは、穏やかな伊根湾をぐるりと囲むように約230軒の舟屋が水際に並ぶ伊根。舟屋はもともと船を収めるための小屋で、その後2階を2次的な居室として使用するようになり、現在では住居や宿泊施設として利用されるなど時代とともに少しずつ姿を変えながら、独特の生活文化が今なお息づいています。まるで海に浮かんでいるかのように見える伊根の舟屋の風景は、どんな角度から見てもフォトジェニック！ 全周5kmの伊根湾を歩いて回るのは大変ですが、伊根町観光案内所ではレンタサイクルの貸出もあるので、自転車を利用するのもおすすめです。ここにしかない絶景に出会えるはずです。昼食には丹後の冬の名物グルメ、ブリしゃぶをいただきましょう。

旅のラストにふさわしい、日本三景のひとつとして有名な「天橋立」へ。宮津湾から阿蘇海を切り取るように延びた全長3.6km、幅20～170ｍの砂州で、約5,000本の松が茂っています。その姿は天にかかる橋のように見えると古くから人びとの注目を集めてきました。湾を囲むように設置された三つの展望所からは三所三様の天橋立を見ることができますが、今回は天橋立を南側から一望できる天橋立ビューランドへ向かいます。地上と展望所を往復運行する乗物からの眺望も見逃せません。絶景を心ゆくまで楽しんだ後は天橋立の中を散策しましょう。松の並木道の途中には恋愛成就のパワースポットもありますよ。

山陰海岸の歴史、絶景、文化の名所をたっぷり巡った二泊三日の贅沢な旅。時間に余裕があるなら、もう一泊して旅の疲れを癒しましょう。天橋立からほど近い「ワインとお宿 千歳chitose」は、江戸時代中期から続く老舗旅館をオーベルジュにリノベーション。天橋立ワイナリーのオーナーでもある当主が選りすぐったワインをはじめ5万本のワインをそろえています。また、毎月オーナーのおすすめワインが特別価格で用意されているのも見逃せません。ワインとともに旬のご馳走、天然温泉を楽しめば最高の旅の締めくくりになることでしょう。