和歌山の日本酒物語 新たな酒文化の発信

和歌山の日本酒物語 新たな酒文化の発信

2023年02月08日

The KANSAI Guide

みかん、梅、柿などが名産品で「手に入らない果実はない」と言われるほど、果実栽培が盛んな和歌山県は、県全域が温暖な気候なうえ日照時間が長いことが特徴である。一方、今回紹介する「平和酒造」が立つ和歌山県海南市溝ノ口は、四方を険しい山々に囲まれていて朝夕に厳しく冷え込むエリア。さらに高野山の伏流水が湧出し、古くから果実よりも稲作に適した環境だった。米が獲れ・気温が低く・水が豊富。酒造りに欠かせない3つの条件が揃っていることから、往時にはいくつもの酒蔵が並び、大いに栄えた集落だったという。

人気の日本酒「紀土」で知られる蔵元・平和酒造は1928年に創業した。創業者の山本保氏は老舗酒蔵の名家出身で、婿養子として代々仏寺であった山本家の家督を継いだ後、念願だった酒蔵を立ち上げたという。当時の寺号が「無量山超願寺」だったことから、その名残で地元民の間では今でも「超願寺」との愛称で親しまれている。

創業後は順調に酒造りに精を出すが、第二次世界大戦の影響もあってやむなく休業。終戦後もしばらくは酒造免許の再開が許されず、再開するものの往時のような立て直しは難しく、長年細々とした営業を続けていた。しかしながら2000年代ごろから「自分達が造りたい物を造ろう」と一念発起し、自社ブランドを再構築して現在の商品ラインナップが続々と誕生する。高野山から流出した良質な伏流水で仕込んだ日本酒は、口当たりが優しく・キレが抜群。日夜研究と試行錯誤を重ね、たどり着いたのはまるで「冷えた湧水」とも思える口の通りの良さが魅力である。

酒造りに使用される「山田錦」の一部は、お客様と一緒に田植えと稲刈りを行うイベントを開催し、蔵人自らが栽培している。蔵に隣接する約1ヘクタールの水田で、毎年初夏に苗付け・田植えを行い、秋の稲刈りまで丁寧に管理をした酒米の上質さはこの上なし。収穫したものは主に純米酒「あがらの田」シリーズで用いられており、通常の「紀土」とは異なる田植えがテーマの特別なラベルも好評だ。

和歌山の玄関口である南海和歌山市駅前の商業施設・キーノ和歌山でショップ&バー「平和酒店」を手掛けたり、東京へはできたてのどぶろくを堪能できるブルワリーパブ「平和どぶろく兜町醸造所」も出店。酒造りとともに新たな酒文化の発信拠点を構え、日本酒のある生活の喜び・楽しさを現在進行形で開拓し続けている。

平和酒造株式会社

住所
〒640-1172 和歌山県海南市溝ノ口119番地
営業時間
9:00-17:00(見学不可、販売店なし)
定休日
日曜、祝日
交通アクセス
①関西空港駅からJR日根野駅下車、JR阪和線に乗り換え、JR和歌山駅下車、JRきのくに線に乗り換え、JR海南駅下車、オレンジバスに乗り換え北山停留所下車、徒歩約10分(所要時間目安:約110分)
②JR大阪駅からJR和歌山駅下車、JRきのくに線に乗り換え、JR海南駅下車、オレンジバスに乗り換え北山停留所下車、徒歩約10分(所要時間目安:約155分)

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