篠原おどり

篠原おどり

2021年12月26日

The KANSAI Guide

(しのはらおどり)

奈良県 関西
国選択・県指定無形民俗文化財

中世末期に流行した優雅な「風流踊り」の流れを受け継ぐ。 奈良・五條市を流れる十津川の支流域、最奥部へ。

奈良県五條市大塔町に伝わる「篠原おどり」は、今から約200年前には踊られていたという記録がある、奈良を代表する伝統芸能のひとつです。起源は諸説あり、五條市・篠原地区での「オオカミ退治」の祈願とも、「オオカミ退治への感謝を込めたもの」とも言われています。舟ノ川流域の最奥部、急峻な山々に囲まれた村で脈々と受け継がれてきた、男女が織りなす優雅な踊り。室町末期・江戸初期に流行した歌にあわせて、男性が打ち鳴らす太鼓に合わせて女性が扇を手に舞う「風流踊り」のスタイルは、“秘境”で知られる篠原地区近隣の十津川村の盆踊りとも共通しています。

十津川の支流である舟ノ川流域、山深い村に残る伝統の踊り「篠原おどり」。 その起源は、オオカミを退治するためとも、オオカミ退治への感謝とも伝わる。

天満神社で奉納される「篠原おどり」。中世末期・近世初期に流行した「風流踊り」の流れを汲む篠原地区で受け継がれてきた

天満神社で奉納される「篠原おどり」。中世末期・近世初期に流行した「風流踊り」の流れを汲む篠原地区で受け継がれてきた

奈良県の南西、西は和歌山県橋本市と隣接する、人口約28,000人を有する五條市。その歴史は古く、旧石器時代の遺跡など数多く見つかっています。
五條市の南部を流れる十津川の支流、舟ノ川流域には中峯、中井傍示、惣谷、篠原という4つの集落が点在し、篠原地区はその最奥部にあります。紀伊山地のほぼ中央部、急峻な山峡に囲まれた山村地域にはいにしえよりそれぞれに独特の山村文化や風習が醸成されており、奈良県の無形民俗文化財に指定された「篠原おどり」もそのひとつです。
毎年1月25日(現在は1月の第3日曜日)の「神事初め」に五條市大塔町篠原にある天満神社へ奉納されている「篠原おどり」。「篠原地区周辺を困らせていた獰猛なオオカミを退治するために村中総出で氏神様に踊りを奉納、その願いが叶ったことから、以降踊り続けられている」と言い伝えられています。その起源ははっきりとは分かりませんが、今から約200年前には踊られていたという記録が古い資料に残っています。

手にした太鼓を打ち鳴らしながら踊る男性に合わせ、女性は扇を持って舞う 優雅な踊りで知られ、「式三番」と呼ばれる3曲を天満神社へ奉納。

神事としてはもちろん、人びとを楽しませるための演芸としても発展した「篠原おどり」。

神事としてはもちろん、人びとを楽しませるための演芸としても発展した「篠原おどり」。

「篠原おどり」は締太鼓を打ち踊る男性に合わせて、女性は扇を手に舞う「風流踊り」で、30曲以上が伝えられていました。神事では「式三番」と呼ばれる「梅の古木踊」「世の中踊」「宝踊」の3曲が奉納されます。昔は天満神社に奉納したあとに同じく篠原地区にある萬福寺へと移動し、お堂の中でも踊られていました。また、踊りの合間には狂言などを行っていたと伝えられ、にぎやかに楽しまれていたようです。
現在、歌詞が伝わっている曲が37曲、踊りも伝わっている曲が17曲ありますが、これほど多くの曲目が伝承されていることは珍しく、神事としてはもちろん、人びとに披露するための演芸としても発展してきたことが分かります。

山々と清流に恵まれた自然豊かな地で、四季折々の姿を堪能。 近隣の十津川村や天川村の人気スポットにも足を延ばそう。

篠原地区に隣接する十津川村の日本有数の長さを誇る吊橋「谷瀬の吊り橋」。

篠原地区に隣接する十津川村の日本有数の長さを誇る吊橋「谷瀬の吊り橋」。

国特別名勝「瀞峡(どろきょう)」では川舟下りも楽しめます。

国特別名勝「瀞峡(どろきょう)」では川舟下りも楽しめます。

「篠原おどり」と同様の風流踊りは近隣の十津川村や天川村でも踊られていたという伝承があり、現在でも十津川村の盆踊りにその影響や共通性が見られます。十津川村では、長さ297m、高さ54mという日本有数の長さを誇る谷瀬の吊り橋や、吉野熊野国立公園内の奈良県・三重県・和歌山県にまたがる国特別名勝の瀞峡(どろきょう)が人気スポットです。公共交通機関を使ってのアクセスはバスのみとなり、奈良県の近鉄八木駅から和歌山県のJR新宮駅までを結ぶ約6時間の日本一長いバス旅の途中に十津川村が見えてきます。また、パワースポットとして知られる天空の神社、玉置神社も人気で、冬期(12/1~3/31)を除いた土・日・祝には完全予約制の「世界遺産予約バス(玉置山コース)」が1日1往復、運行しています。桜や新緑、紅葉など、お出かけのシーズンにぜひ、利用してみてはいかがでしょう。
天川村へのアクセスも公共交通機関はバスのみで、近鉄下市口駅からバスに乗ります。観光エリアは3つに分かれており、洞川エリアには修験道の地として知られる大峯山登山口の近くに洞川温泉街があります。そこでは修行者や登山客を迎える古風な宿が軒を並べており、ノスタルジックな光景が見られます。中央エリアは清流天ノ川に沿って天河大辨財天社があり、こちらも多くの参拝客が訪れる人気スポットです。弘法大師の伝承が残る西部エリアは薬湯露天風呂が楽しめ、人里離れた落ち着いた雰囲気がまさに“秘境”そのもの。それぞれのエリアの自然や歴史を体感してください。

写真提供 五條市教育委員会事務局文化財課/(一財)奈良県ビジターズビューロー/矢野建彦

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