松尾寺の仏舞

松尾寺の仏舞

2021年12月26日

The KANSAI Guide

(まつのおでらのほとけまい)

京都府 関西
国指定重要無形民俗文化財

中国から伝わるも、やがて失われた古の宮廷舞楽。 その一端を今に伝える、典雅な仏の舞。

平安時代(794〜1185年)中期に観音霊場となり、西国三十三所、観音霊場第二十九番札所として今も多くの信仰を集め続ける松尾寺には、連綿と受け継がれる典雅な仏舞が残されています。この松尾寺は和銅元年(708年)に唐の僧、威光上人が結んだ草庵に発する伝統ある名刹で、京都府と福井県の県境、若狭湾国定公園を望む青葉山、通称「若狭富士」と呼ばれる山の中腹にあります。

日本海を見下ろす静かな山寺で連綿と受け継がれ、 息づいてきた釈迦の生誕を祝う儀式。

過去に度重なる火災に見舞われた松尾寺。現在の威厳ある仁王門は江戸中期の明和4年(1767年)に建立されたもの。

過去に度重なる火災に見舞われた松尾寺。現在の威厳ある仁王門は江戸中期の明和4年(1767年)に建立されたもの。

松尾寺で、釈迦の生誕を寿ぐ「卯月八日(花祭り)」の法要において奉納される「松尾寺の仏舞」。この舞は奈良時代に唐から伝わったとされ、もともとは大寺院で行われていたものが、地方へと伝播していったものといわれています。松尾寺においてこの仏舞がどの時代から行われていたのか、地元では600年程前に始まったと伝えられていますが、その詳細な資料や由来などは焼失しており不明となっています。ただ、享保10年(1725年)の仏面の箱に書かれた銘文や、江戸時代中期に書かれた記録などから、18世紀には行われていたことが確認できます。このことからも300年前頃にはこの地域に根差した芸能であったと思われます。

この仏舞は、ほかの地域では姿を消しており、現在では古い時代の「卯月八日」の様相をうかがわせる貴重な資料として、2004年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。
なお、この仏舞ですがかつては旧暦の4月に行われていましたが、暦の変わった明治以降新暦の5月8日に行われるようになっています。

地元保存会が連綿と守り続けた伝統。 古式ゆかしき雅楽の音色に合わせて6人の仏がたおやかに舞い踊る。

仏舞には仏が内を向く舞、外を向く舞、さらに舞台を回り互いに位置を変え踊る舞がある。

仏舞には仏が内を向く舞、外を向く舞、さらに舞台を回り互いに位置を変え踊る舞がある。

仏舞の舞台となるのは、須弥壇が置かれた本堂の内陣の前に畳表に縁をつけた「うすべり」を敷き特設の舞台を作り上げます。
5月8日、近隣の真言宗寺院の僧侶によって法要が行われたのち、舞台には雅楽の奏者と6人の舞人が現れます。6人の舞人はそれぞれ黄金色の仮面と、光背を模した冠を着用しています。この舞人は釈迦如来、大日如来、阿弥陀如来の三尊を表しており、3人ずつが須弥壇の前に向かい合って、雅楽の演奏に合わせて印を結ぶ、鉦を叩くなどの所作を取り入れたゆるやかな舞を繰り返していきます。
「松尾寺の仏舞」は、古くは松尾寺の僧侶たちが雅楽と舞を行っていましたが、寺坊の減少とともに門前の人びとが家筋ごとに仏や篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき)といった楽器の担当を決め、長男に伝承するという取り決めの元、厳粛に伝統を守り継いできました。現在は、地元の松尾地区を中心に周辺地域の人びとも参加して、仏舞保存会を組織し、伝承しています。
また、仏舞で演奏される曲は越天楽や五常楽とされていますが、現存している同名の曲とは異なっていることから、今はなき雅楽の一演目を知る手がかりとなる貴重な歴史的資料となっています。

ダイナミックな自然がつくる絶景と山海の恵み。 自然に寄り添う人びとの織りなす素朴で豊かな暮らしを味わおう。

東西120kmの長大な海沿いに、リアス海岸や砂丘など多彩な地形が続く山陰海岸ジオパーク。

東西120kmの長大な海沿いに、リアス海岸や砂丘など多彩な地形が続く山陰海岸ジオパーク。

現存する12棟の赤れんが倉庫のうち5棟を整備した「赤れんがパーク」は舞鶴の観光拠点。

現存する12棟の赤れんが倉庫のうち5棟を整備した「赤れんがパーク」は舞鶴の観光拠点。

松尾寺のある舞鶴周辺は、日本海に面した「海の京都」と呼ばれるエリアにあり、西舞鶴には舞鶴の名前の由来となった戦国武将、細川幽斎の築城した田辺城(別名:舞鶴城)と、町家や白壁の蔵が軒を連ねる伝統的な町並み、そして豊かな漁場をもつ漁師町が広がります。
また東舞鶴には、港と赤れんが倉庫群からなるノスタルジックな景観が広がっています。さらに少し移動範囲を広げれば、京丹後市の経ヶ岬から鳥取市の白兎海岸、浜村海岸、青谷までリアス海岸が続く「山陰海岸ジオパーク」や日本三景のひとつ天橋立も見て回ることができます。
また、この地域の魅力といえば舞鶴かに®や間人ガニ®などのブランドガニやブリ・京鰆といった魚介に、京丹後の山が育てた栗やきのこ、松茸といった山海の珍味の数々です。
「京都」という王朝文化の薫り漂う市街地とは大きく異なる、厳しい自然とそこに暮らす人びとが紡ぎ出す豊かな生活文化を体感してみてはいかがでしょう。

画像提供:舞鶴市/舞鶴観光協会/山陰海岸ジオパーク推進協議会

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