三重県の日本酒物語 伊勢神宮への案内者・御師(おんし)

三重県の日本酒物語 伊勢神宮への案内者・御師(おんし)

2020年12月10日

三重県の日本酒物語_伊勢神宮への案内者・御師(おんし) 

 観光ガイドは日本では平安時代(9~11世紀)の後期から存在していた。御師は特定の寺社に参詣者を誘導する役割を担っていたといわれる。有名なのは熊野の御師で紀伊半島の「熊野三山」に詣でる貴族を案内し、宿泊の世話や山内の案内をし、祈祷の世話もした。それが各地に波及してくると参詣者を率いて参るようになり、御祈祷師が略されて「御師」と呼ばれるようになる。伊勢の御師は毎年地方に赴いて祈祷とお神札の頒布を行い、伊勢に着いてからの世話もした。
 伊勢神宮への集団参詣が江戸時代(特に18世紀初頭から)に流行したのは、庶民の移動が厳しく制限されていた時代にあって、伊勢神宮参詣の名目であれば通行が許されるということもあった。一生に一度は参詣したいという庶民の願いを御師はうまく導いていったのである。江戸(東京)から片道15日間、大阪からでも5日間かかったという。もっと遠い九州や東北からも参詣したのであった。
 何故伊勢神宮へ参詣したいのか、各地の寺社でも豊作祈願などを願う祈祷をしてもらうことができても、伊勢を選んだ理由は、伊勢の御師が毎年全国に足を運んでいたことと、移動できる楽しみが合致したからだともいわれている。庶民が奉公先を抜け出して伊勢参宮しても、あえてとがめを受けなかったという。だから伊勢詣では御蔭まいりとも抜け参りともいわれたのだ。

【カモン酒蔵】A Welcoming Brewery
 参詣者が伊勢に着いて楽しみにしていることの一つは、御師が手配してくれる宿や食べ物の豪華さであった。長旅の疲れも吹き飛ぶほどの接待があったのであろう。江戸期の文学にも現れ、人気を博したほどである。そこに「酒」はなくてはならないものであったろう。
 いまでは御師は「観光ガイド」となり、案内はガイドブックになったが、伊勢神宮の内宮前には小さな酒蔵が待っている。「伊勢萬内宮前酒造場」という全国でも小さな蔵がある。地元・伊勢の唯一の地酒を飲ませてもらえる。毎月1日の「朔日参り」には「朔日しぼり」という酒を販売し、試飲では蔵元でしか味わえない「しぼりたて生原酒」が飲めるという。酒蔵のある伊勢神宮へ続く「おはらい町通り」にはそれこそ伊勢詣での賑わいをそのままにタイムスリップする劇場性のある場所となっていて、それだけでも気分は昂揚するはずだ。

株式会社 伊勢萬
〒516-0025 三重県伊勢市宇治中之切町77番地の2
営業時間:9:30-17:00(季節により営業時間は異なります)
酒蔵の見学は衛生上の観点から行っておりません。
定休日: 年中無休

交通アクセス
①JR大阪駅からJR鶴橋駅にて近鉄線に乗り換え、近鉄鶴橋駅から近鉄伊勢市駅下車、伊勢市駅からバスにて神宮会館前バス停下車、徒歩約5分
(所要時間目安:約130分)

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