コラム

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    SBNR視点でみる関西の価値


    " SBNR ( Spiritual But Not Religious -無宗教型スピリチュアル- )現象について2014年から研究をしている。きっかけは南カリフォルニア大学日本研究所のウィリアム・ダンカン教授とJapan House LAの立ち上げのディレクションをしていた時である。日本文化への西洋諸国からの関心について調査を進めている中で、ダンカン教授から「海外からの日本への関心を表層的に捉えてはならない。それはもっと本質的な変化である。」と教えていただいた。そこで出会ったのがSBNR視点で日本文化と異文化の融合の接点を考えてゆく思考である。それ以来、現在に至るまで私自身の最大のモチベーションになっている。



    Pew Research Centerの調査では全米のSBNR人口は5人に1人といわれ、そしてその中の83%が若者である。欧州ではSBNR層は34.7%にのぼる。4つの特徴があると言われている。心と体のバランス( Mindfulness )、ネイチャー思考( With Nature )、人徳、大義、誠実 (Think Right)、ポスト資本主義 ( Post-Capitalism )である。SDGsや自然派生活、Positive influence、Social Goodに強いモチベーションがある。加えて、アジア諸国への旅や、日本文化を始めとした東洋思想への関心が近年特に高まっており、世界の観光マーケットは年率3.4%で拡大している中、アジア諸国への訪問は7%で伸びており、日本は19.4%の伸びを示している。


    ハーバード大学が発表したSBNRに関するレポートでダリー・カテライン教授が「SBNR現象の原因はテロや自然災害、パンデミックなどの社会環境の根本を脅かす大きな変革である。人々はこれまでのような価値観ではなくより自らが人徳を持って社会を良くするために何かができないかと考えている。SBNRは新しいアメリカンドリームの原動力になるかもしれない。」と記しているように、今度のSBNRのソーシャル・パワーの変化はますます重要なイッシューになると考えている。



    このコロナ禍の折で全世界的に価値観のパラダイムが変化する中、急速にSBNR化が進展してきているように実感をしている。東京への訪問は1回目以降下降するが、地方への訪問は上がってゆく。そして中でも特に関西エリアに存在する熊野古道高野山比叡山お伊勢参り、お遍路などの精神的な文化価値に出会えるエクスペリエンスへの注目が高まっている。また、ツーリズム分野のみならず、ガストロノミーではビーガンを始めとした菜食主義の台頭、ベジタリアンメニューの増加とSBNRの関係、マインドフルネス・リーダーシップとも呼ばれる禅を取り入れた企業経営の西洋での拡大やCMO(Chief Meditation Officer)の出現など、「禅イニシアチブ」へのSBNRが与えるビジネス要素も見逃せない。

    こうしたSBNR視点で関西を解釈してゆく重要性を感じる中、それぞれの専門家と共に「Spiritual KANSAI」をテーマとした特集を組んでみようと思い立った。是非、読者にとっての関西の有形無形の価値を探求するきっかけとなれば幸いである。


    執筆者 Spiritual KANSAI 総合プロデューサー 渡邉賢一

    株式会社XPJP 代表取締役

    バリューデザイナー

    内閣府 価値デザイン懇話会 委員

    慶應義塾大学大学院SDM研究所 研究員

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