コラム
関西の田舎の魅力
関西の田舎の魅力
関西地方には、歴史的な都市や大都市がいくつかあります。例えば、大都市である大阪市、昔の日本の首都・京都、趣のある神戸市などです。また、関西には伝統的な農村地域、自然の素朴な美しさと独自の魅力を持つ田園地域もあります。それは、都市の騒がしさやネオンから離れた古き良き日本がまだ残っている地域です。まだあまり知られていない、この地域をぜひ訪れてみてください。
里山、農業・林業の昔ながらの風景
日本特有の典型的な風景の1つは、里山の風景です。「(Sato)里」は村、「(yama)山」は丘や山を意味します。里山は、名前の通り、ただ単に人が暮す山村というよりは、山の麓と耕地に適した平らな農地の間にある場所であり、そこで何百年もの間、人々が生活を営み、農業や林業によって生態系(エコシステム)を維持してきた場所です。そして現在では、この里山は、自然に優しい持続可能(サステイナブル)な生活スタイルとして認知されています。
里山は、残念ながら、日本人のライフスタイルが変わったため、昔と比べると少なくなりました。例えば、昔は火を使うために木や炭を使いましたが、現在はそれが石油に変わり、堆肥は化学肥料に置き換わったためです。また、高齢化と過疎化は、この古き良き里山の消滅を早めました。最近、この特有かつ大切な場所である里山の重要性は、一般の人たちにも認識されるようになり、保全の動きもスタートしています。そのため、知識が豊富で情熱あふれるガイドによる専門的なツアーも可能になりました。ガイドさんからは、古くからの農業技術や知恵を学ぶこともきます。
里山の風景は、きっとあなたの心を掻き立てます。雄大な山々の景色の下には豊かな緑の田園、そして農家の周辺には、竹林や手入れされた草木が広がっています。このエリアで農業を営む人々の暮らしは、シンプルです。里山では、日本が誇りに感じている四季を明確に感じることができ、住む人々にも、訪れる人々にも自然の美景を見せてくれます。春の桜、夏の稲、秋の豊かな色彩は本当に素晴らしく、日本の憧れの風景がそこにあります。
里山
里山を見る
古き良き里山の風景を見る最適な場所の1つは、京都の美山です。そこには、かやぶき屋根の合掌造りの民家が多く残っています。伝統的建造物群保存地区である美山は、古き日本が大好きな人やフォトグラファが大好きな場所だと思います。保全されている50軒のうち、39軒は今でもかやぶきの民家です。農業地域である美山の歴史文化を知りたいなら、
美山民俗資料館を訪れるのはオススメです。美山では、古民家等で宿泊することもでき、昔ながらのライフスタイルを体験することもできます。また美山町に古くからある鎌倉神社からは町を一望でき、壮大な景色、季節ごとに違う古き良き日本の風景を楽しむことができます。
美山
奈良県の明日香村は、日本初代天皇の故郷とされています。また日本で最初の仏教寺院ができた場所でした。明日香村にある橘寺は、606年、日本の仏教初期の支持者であった聖徳太子の出生地につくられました。江戸時代(1603-1868)に再建されたこの寺院の境内には、
高さ1メートルほどの古い石があります。その石には、2つの顔が掘られています。これは善と悪の人間の両面性を表していると信じられています。誰が、いつ、なぜ作ったかは謎のままです。
明日香村にある昔の学校だった場所は、現在、ゲストハウスになっています。のどかな田園を見渡せる場所にあり、飛鳥資料館から徒歩圏内にあります。この地域には、歴史的な神社や寺院、古代からの古墳、神秘的な巨石、さらには温泉が点在しています。そのほかにも、いちご畑、ぶどう畑、そして絵のように美しい稲渕の棚田があり、このすべてはレンタサイクルで簡単にアクセスできます。こういう場所なら数日間、あるいは数週間、平和で静かな休暇を過ごすことができ、古き良き日本の神髄を発見することができます。
昔ながらの民家で一夜を過ごし、地元の料理を味わうこともできる、伝統的な農業の生活スタイルを体験できるファームステイは、現在、京都の亀岡、綾部、福知山、鳥取県の智頭町、徳島県の三好市、上勝町、その他にも関西地方のさまざまな場所で体験できます。この日本独特の宿泊体験をすれば、日本の深く多様な文化をより理解でき、もっと日本の田舎の文化を体験したいという気持ちになるでしょう。
明日香
素朴な漁村と離島
関西地方は、南は太平洋、大阪湾、瀬戸内海、北は日本海に面しています。もちろん、海は、昔から貿易や輸送の重要な供給ラインであり、さらには食べ物の供給源としても重要でした。多くの川と巨大な琵琶湖も同様です。関西地方には素朴で、情緒的な漁村が点在しています。あまり知られていない場所としては:
吉原、海の隣の京都
京都の北にある舞鶴市・吉原は、小さな漁業の町です。もしかすると、インターネット、旅行本、パンフレットでも見つけられないかもしれません。吉原について聞いたことがある、そして行ったことが日本人も、まぁまぁ珍しいです。それでも、吉原のことを知っている、わずかな人には、「海の京都」「日本のヴェネチア」と認知されています。この呼び名から、だいたいどんな場所か、想像できますよね。この川と運河に隔てられた海辺の漁業の町には、江戸時代(1603-1868)の雰囲気が今も残っており、運河に沿って、伝統的な民家が立ち並んでいます。その民家の下は、運河側に、ガレージのようなボートハウスがあります。その中の一つ、130年以上の歴史を持つ伝統的な民家は現在、宰嘉庵(さいかあん)という宿になっており、泊まることができます。レンタサイクルを使い、昔ながらの建築や町並みを楽しみ、その後は、伝統的な船に乗って、運河沿いの町並みを楽しみましょう。そして海からとったばかりの吉原の美味しい魚介類を地元の人達自慢の料理法で味わってください。
吉原
淡路島
本州と四国の間に位置する淡路島は、関西地方で1番大きな島であり、神秘的な島です。
日本発祥の地といわれます。神道の神話によると、淡路島は伊邪那岐(イザナギ)によって創造された最初の土地でした。伊邪那岐(イザナギ)が淡路島を造った時、おそらく自分のリゾート島として使用することを考えていたのでしょう。なぜなら、この島の自然が本当に素晴らしいからです。絵のように美しい平原、崖、ビーチや森もあります。瀬戸内海に囲まれており、世界最大の渦潮を見ることができます。淡路島から四国まで続く鳴門海峡では、潮の流れが渦潮を引き起こします。ボートツアーや海峡にかかる明石海峡大橋からも見ることができます。島の西海岸に位置する石田には、残された数少ない昔からの棚田があります。そこから見る夕日は、素晴らしく美しいです。500年前からの伝統的な人形劇、無形文化遺産に登録されている淡路人形浄瑠璃は、南淡路で毎日見ることができます。人形のリアルな動き、彼らが語る物語、そしてこの芸の背後にある文化があなたを魅了します。
淡路島
鳥羽の島々
神島、答志島、菅島、坂手島の名前は、最初は、言い辛く、覚えにくいですが、アクセスはしやすく、1度訪れると忘れられない場所となります。人が住んでいる、この4つの離島は三重県鳥羽市の沖合に位置しています。すべては、神秘的、歴史的、文化的、そして日本の精神の宿る伊勢志摩国立公園の一部です。もちろん、各島には独自の雰囲気、景色、魅力があります。鳥羽へは、大阪からも近鉄列車、または車でも簡単にアクセスでき、鳥羽からは定期フェリー船で島々に行くことができ、近い島はおよそ10分、遠い島でもおよそ40分です。
この4つの島々からは、日の出、夕日、夜の星空、そして静かで美しい伊勢湾の風景を楽しんでください。そして平穏な生活、素朴な島の人々のおもてなし、豊かな文化と歴史、情緒があり、慌しさからかけ離れた島の生活をぜひ体験してみてください。世間から離れ、この鳥羽の島々で、何も考えない時間を楽しんでください。
答志島
川の風景と日本の不思議な橋
徳島県三好市には日本で最も不思議な橋があると言われています。かなり奥地、そして美しい祖谷渓は、伝統的なかやぶき屋根の民家と、植物のつたと板だけで造られたつり橋で有名です。この橋はまるで、映画「インディージョーンズ」に出てきそうな感じです。橋の長さはおよそ40m、高さは川の水面から14mです。この橋は、弘法大師(774-835)が川を渡るのを助けるために作られたと言われています。また、もう一つの説では、12世紀、内乱の戦いに敗れ逃れてきた平家の武士が作ったとも言われています。かつて川を渡る唯一の方法だった橋は、今ではそれ自体が観光名所となっています。当時は、およそ30の橋がかかっていましたが、今はこのような橋は3つしか残っていません。祖谷渓は、かなり奥地にあり、最近までは、あまり人の行き来がない場所だったため、独自の文化が発達しました。緑豊かな自然に囲まれた未開拓地域の自然、そして峡谷と川を渡るグラグラした橋のある風景は壮観で、昔の日本の生活を見ることができます。
このように、関西地方では、新たな発見、貴重な経験、美食を味わうなど、さまざまなことを体験することができます。このような場所はインターネットの観光サイトや観光パンフレットでは、あまり紹介されてはいません。あるところは、現地にたどり着くには時間と労力を要しますが、でも、そこへ行けば、滅多に見られない風景を見ることができ、
人生を豊かにしてくれる経験、素晴らしい写真を撮ったり、思い出をつくることができます。不思議なストーリーや驚くべき事実を学こともできます。関西地方の田舎の魅力は、本当にたくさんあります。
祖谷渓
※この内容は、オリジナル英文を翻訳した文章です
Writer
クリス・グレン ライター / インバウンド観光アドバイザー
オーストラリア出身。93年より名古屋市在住。
英語と日本語を使いこなすバイリンガル ラジオDJとして活躍するほか、日本の魅力を語る外国人としてNHK「ブラタモリ」などテレビ出演も多数。オーストラリアではコピーライターとして活躍し、10,000本以上のCMを手がけた。
近年は、訪日外国人の受け入れ環境整備、地域の魅力の掘り起こしと磨き上げ、外国人目線での情報発信に関するアドバイス等を行う、インバウンド観光アドバイザーとしても活躍中。外国人のニーズやセンスにマッチした英文ライティングにも定評があり、観光関連の情報誌や自治体、DMO等の運営するWEBサイトへの執筆も多数おこなっている。
著書に「城バイリンガルガイド」(小学館)、「豪州人歴史愛好家、名城を行く」(宝島社)、「The Battle of Sekigahara」(英語版)がある。