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姫路から「天空の城」へ:関西の隠れた城下町をめぐる旅

姫路から「天空の城」へ:関西の隠れた城下町をめぐる旅

最終更新

大阪や京都からも簡単にアクセスできる姫路は、白く輝く城、美しい庭園、そして歩きやすい街並みで知られる日本有数の観光地です。けれども、城の外に広がる町には、多くの旅人が見落としているもうひとつの日本の姿が隠れています。

今回は、姫路城から「天空の城」とも呼ばれる霧に包まれた竹田城跡、そして侍文化と茶の伝統が息づく文化の町・福知山へと旅を続けます。

1日目:姫路城から「天空の城」へ

姫路城:日本の城の原点をたどる玄関口(兵庫県姫路市)

姫路駅を出た瞬間、真っすぐに伸びる大通りの先に、白く輝く姫路城の姿が現れます。「日本一美しい城」と称される姫路城。その美しさの理由は、その優雅な外観だけでなく、驚くほど良好に保存された木造建築の構造にもあります。

1609年に完成した天守は、今もなお当時の姿をほぼそのまま残しています。大天守と3基の小天守を4つの渡櫓でつないだ連立式天守は、当時の城郭建築の最先端のものです。城内に足を踏み入れると天守に至る道が複雑に分かれ、連なる門や櫓で攻め手の勢いが削がれるように工夫されています。国宝8棟、重要文化財74棟の建物を身近にみて、かつての城の機能を体感することができます。

たとえ急がずに歩いても、姫路城の見どころをじっくり巡るには2〜3時間はあっという間に過ぎてしまいます。

好古園:姫路城の隣に佇む静寂のオアシス(兵庫県姫路市)

城からほんの数分の場所にあるにもかかわらず、好古園に足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだような感覚になります。1992年、かつての武家屋敷跡の地割りを生かして造られたこの庭園は、江戸時代(1603〜1868)の美意識を現代に再現することを目的として設計されました。

9つの趣の異なる庭園が、曲がりくねった石畳の小道や木橋でつながっており、池泉庭園、竹林、四季の花が咲く花の庭など、日本庭園の多様な表現が楽しめます。

歩を進めるごとに、白壁に映る竹の影、水の流れる音、花の香りといった静かな風景が心を和ませてくれます。

姫路城との共通入場券で入園できるため、観光ルートに組み込みやすく、また市内でもっとも穏やかな時間を過ごせる場所のひとつです。

書寫山圓教寺:雲の中の寺(兵庫県姫路市)

好古園から少し足を延ばすと、姫路市の北西にそびえる書写山へ。ここには、約1,000年前に創建された古刹・書寫山圓教寺があります。「西の比叡山」とも呼ばれ、映画『ラストサムライ』のロケ地としても知られています。

境内では、仏教の経典を一文字ずつ書き写す「写経」体験も可能です。静かな森に囲まれ、心を整える瞑想的な時間を過ごすことができます。

なかでも圧巻なのが、急斜面に木造の高床構造で建てられた摩尼殿(まにでん)。自然と建築が見事に調和した姿は、まさに「山上の聖域」と呼ぶにふさわしい美しさです。

竹田への道と城下町ホテルENでの宿泊(兵庫県朝来市)

姫路を後にして北西へ向かうと、兵庫県北部・朝来市に入ります。市街地を抜けると、やがて静かな谷あいの町に竹田城下町が現れます。その高台にそびえるのが「天空の城」として知られる竹田城跡です。

宿泊には、竹田城 城下町 ホテルENがおすすめです。かつての酒蔵をリノベーションしたこのホテルは、伝統建築の趣を残しながらも快適な滞在ができる造り。畳の部屋、土壁、むき出しの梁など、どこか懐かしい日本の温もりが感じられます。

夕食は、但馬牛や山菜など地元食材を使った季節の会席料理が楽しめます。特に、甘酒や日本酒をアレンジした創作料理──例えば「カカオと甘酒のさつまいも」など──が印象的です。

宿泊者の特権は、翌朝の雲海のチャンス。早朝、谷を覆う霧が城跡を包み込み、まるで空に浮かぶ城のような幻想的な光景を目にできます。雲海が見られるのは主に5月から11月ごろですが、気温差や天候によって大きく左右されるため、運次第でもあります。

2日目:竹田城の夜明けと福知山の知られざる遺産

夜明けの竹田城跡:空に浮かぶ要塞(兵庫県朝来市)

竹田の朝は、日の出よりも早く始まります。
竹田城下町ホテルENが用意してくれるおにぎりと味噌汁の軽い朝食セットを手に、私たちは竹田城跡への登山道を登り始めました。

この城は、15世紀に但馬国守護・山名氏の家臣であった太田垣光景(おおたがきみつかげ)によって築かれたと言われています。かつては但馬と播磨を結ぶ重要な街道を守る拠点として機能していました。現在の石垣は、豊臣秀吉の弟である小一郎秀長が普請を命じたと伝えられています。

その後、関ヶ原の合戦に当時の城主赤松広秀が西軍側として参戦したことで廃城となりましたが、現在も広大な石垣群がほぼ完全な形で残っており、雲の上に浮かぶような壮大なシルエットを描き出しています。

10月初旬に訪れた私たちは幸運にも雲海を見ることができました。
冷たい空気と川霧が交わることで、竹田城跡はまさに「天空の城」となります。

山頂で、雲が眼下を流れるのを眺めながら朝食をとると、なぜ全国各地から人々が暗いうちにここを訪れ、この一瞬の奇跡を見届けようとするのかがわかります。

ホテルに戻って朝食とチェックアウトを済ませたら、旅は東へと続きます。次の目的地は、歴史と職人文化が息づくもうひとつの城下町――福知山です。

福知山城と柳町エリア(京都府福知山市)

福知山城は、福知山市街を見守るように丘の上に佇んでいます。
1579年、戦国武将・明智光秀によって築かれたこの城は、京都市内と丹後・但馬を結ぶ重要な交易路を守る要衝でした。明治時代に一度取り壊されましたが、1986年に1600年~1669年の絵図を参考に天守閣が再建されました。

天守閣最上階からは、福知山市街、由良川、そして遠くに続く山々までが一望できます。

城の麓に広がる下柳町地区には、福知山の商人町の風情が今も残っています。修復された町家には、カフェやギャラリー、小さな飲食店が並び、散策にもぴったり。
中でも人気なのが「柳町」レストラン。福知山名物の鴨肉と葱だけの鍋、鴨すきと自家製だしでふんわり煮込んだ鶏肉と卵の親子丼が評判です。

そこから少し歩くと、老舗和菓子店「足立音衛門 京都本店」があります。

丹波栗を使ったパウンドケーキ、どら焼きなど、上質な地元食材を使った手づくりのお菓子が並びます。
ゆっくり過ごせるカフェもあるので多くの旅人が京都への帰路につく前のひと休みを楽しんでいます。

山城屋茶舗:手仕事の体験(京都府福知山市)

創業100年以上の歴史を持つ「山城屋茶舗」は、京都府北部で最も古い茶商のひとつです。
冷涼な気候と霧深い山あいの環境を生かして、
玉露や抹茶の原料となる碾茶などの高級茶を生産してきた福知山は、抹茶で知られる宇治茶の品質を支える重要な産地のひとつです。

ここでは、茶和紙を貼ってオリジナルの茶筒に仕上げる体験ができます。
使用するのは、福知山産の和紙や、綾部市黒谷で作られる楮(こうぞ)を原料とした伝統的な黒谷和紙――日本最古の手すき和紙のひとつです。

薄い和紙を筒にぴったりと貼り合わせる作業は、集中力と繊細な手さばきを要します。わずかなずれや力の入り方で破れてしまうこともあるほど。

完成した茶筒は、世界にひとつだけの温もりある工芸品となります。

城と雲のあいだで

姫路から福知山へ――2日間の旅は、日本の名城をめぐるだけでなく、それぞれの城がいかに町の性格や文化を形づくってきたかを教えてくれます。

旅の途中では、姫路の精緻な建築美、竹田の山上に眠る静けさ、福知山の茶文化に宿る静かな職人の心――そのすべてをゆっくり味わってください。
福知山がこの旅の最終目的地。

もしこのような旅に心惹かれるなら、「関西の城たび」シリーズの他のルートもぜひチェックしてみてください。それぞれの旅が、日本の変わらぬ心を映し出すもう一つの物語を教えてくれます。

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