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古代から人々の暮らしや祈りを見守ってきた場所には、時を超えて残る景色があります。明治の偉業である琵琶湖疏水、朱塗りの三重塔と紫陽花が彩る寺院、日本に現存する最古の歌集でも歌われた景勝地。どの場所も、現地に立つと歴史の重みを感じられます。この記事では、「行ってよかった!おきにいりの関西フォトコンテスト」に寄せられた作品の中から、特に歴史を感じられる3つのスポットを厳選。カメラを手に、時を越えて受け継がれた風景を切り取ってみませんか?
「国宝 琵琶湖疏水 桜吹雪」 小島尚和(kojinao1122)
琵琶湖疏水は、水量豊富な琵琶湖から京都へ水を運ぶために造られた人工運河です。滋賀県大津市と京都市を結ぶ全長約20kmの第1疏水、第1疏水の北側を並行して流れる全長約7.4kmの第2疏水、全長約3.3kmの疏水分線などから構成されています。
琵琶湖疏水の建設は、明治維新直後の1869年、東京遷都により人口減少や産業衰退の危機に直面した京都の復興策として計画されたもので、当時の最新技術と巨額の予算を投じて建設されました。
1890年の竣工以来、水道、水力発電、舟運など多岐にわたり、京都の産業・生活基盤の発展を支えた都市基盤施設であり、当時の土木技術の粋を集めて建設された構造物として高く評価され、24ヶ所の施設が重要文化財として指定され、そのうち5ヶ所が国宝として指定されました。
琵琶湖疏水の両岸には山桜、ソメイヨシノなど約100本の桜が植えられ、春には疏水の遊歩道を散策しながら花見を楽しむことができます。
春と秋には観光船が運航され、歴史ある水の道をゆったりと船から眺める特別な体験も可能です。疏水を彩る桜が水面に映る光景は幻想的な美しさ。風が強く吹く日には風に煽られた桜の花びらが、ひらひらと吹雪のように舞い落ちる風情ある光景を目にすることも!儚くも美しく散る桜吹雪は、思わずシャッターを切りたくなる情景です。
「朝日で表情変える八仙花」 しんじ。
京都府南部・山城エリアの豊かな自然の中に佇む岩船寺(がんせんじ)は、729年に聖武天皇の勅願により創建されたと伝わる古刹です。山門をくぐるとまず目を引くのが、鮮やかな朱塗りが美しい三重塔。もとは9世紀頃に建立されましたが、1221年の承久の乱で焼失。その後、15世紀半ばごろに再建されたものと言われ、中世後期を代表する三重塔として国の重要文化財に指定されています。
均整のとれた美しい三重塔の姿と周囲の豊かな緑とのコントラストが息をのむほどに美しく、訪れる人々を魅了します。
岩船寺は、花の寺としても知られ、梅や桜、水蓮や紅葉など、四季折々の花が境内を彩ります。
中でもその美しさが際立つのは、アジサイが咲き誇る梅雨時。約30種類、5,000株ものアジサイが境内を埋め尽くすように咲き誇る様子は圧巻です。アジサイは品種によって咲く時期が異なるため、長く楽しめるのも魅力の一つ。岩船寺では、例年6月上旬から7月上旬までアジサイを楽しむことができます。
色とりどりのアジサイと三重塔が織りなす幻想的な情景をぜひご覧くださいね。
「雑賀崎の夕焼け」 YOSHI
和歌山県の南西部に位置する雑賀崎(さいかざき)は、瀬戸内海国立公園の東端に広がる漁師町です。古くから風光明媚な景勝地として知られ、その風情あふれる景観は、日本に現存する最古の歌集「万葉集」にも詠まれたほどです。
近年は、急峻な斜面に家々がひしめき合う独特の景観が、イタリア南部のアマルフィ海岸に似ていることから「日本のアマルフィ」とも称され、注目を集めています。
なぜこのような独特な景観になったのかについては諸説ありますが、一説には家から大切な船の様子を見守るためであったとも言われています。
集落内には細い路地が迷路のように複雑に張り巡らされていて、ノスタルジックな漁村の雰囲気を肌で感じながら味わい深い町歩きが楽しめます。4月から10月には和歌浦湾を周遊するクルーズ船が運行し、海上からその独特な景観を眺めることができます。
夕暮れ時は、街全体のシルエットが海に映り込み幻想的な光景が広がります。
古より人々を魅了してきた雑賀崎。時代を超えて受け継がれてきた唯一無二の絶景をぜひ体感してください。
関西には、歴史を映し出す景観が今も息づいています。旅先で写真を撮りながら、往時の人々に思いを馳せてみませんか。
「行ってよかった!おきにいりの関西フォトコンテスト」は、EXPO2025関西観光推進協議会と東京カメラ部がタッグを組んで開催した特別企画です。
2025年4月21日~6月30日にかけてSNSで募集された数多くの写真の中から、地域ごとに選ばれた14作品は、どれも関西の魅力を切り取った珠玉の一枚。
受賞者それぞれの思いとともに写し出された景色を眺めれば、きっと「この場所に行ってみたい」と心が動くはず。お気に入りの写真を見つけたら、ぜひその土地へ旅して、実際の風景を自分の目で確かめてみてくださいね!