日本の仏教の聖地・高野山の寺に泊まり仏教を体感する
2020年12月01日
高野山は今から1200年前に高僧・弘法大師が開いた仏教の聖地。特別な霊気に包まれた標高900mの山全体が「金剛峯寺」の境内で、大きくは、重要なお堂が集中する「壇上伽藍」エリアと、弘法大師が今もいらっしゃるという「奥之院」エリアに分かれます。山全域には117のお寺が存在し、その内52寺が泊まれるお寺「宿坊」として参拝者を受け入れているそうです。今回、「壇上伽藍」に近い宿坊「遍照尊院」に泊まり、仏教をこの身で体感してきます。
高野山宿坊協会ホームページ
アクセス便利な高野山
高野山へは大阪(難波)から南海電鉄の特急とケーブルカーを乗り継いで約90分。ここからさらに、路線バスを使って高野山中心地へ。乗換駅はどこも英語の案内が豊富でスムーズです。京都からなら直通バスを使えば約150分で高野山中心地に到着できるそうです。
高野山はたいへん広いので、路線バス乗り放題の乗車券が便利でお得です。
路線バス1日フリー乗車券
畳の部屋、大浴場、精進料理と、宿坊で日本を楽しむ
15:00にチェックインしたら荷物を置いて日暮れまで壇上伽藍周辺の観光へ。宿に帰着後は畳が敷かれた和室でのんびりと。椅子がセットされた窓際からは日本庭園が眺められ、正座が苦手な人も心落ち着くひと時を過ごせます。
お風呂とトイレは部屋の種類によって付いていないこともあります。付いている方が快適だけど、ここはお寺。“共同で大切に使う”ことを楽しむのが正解かもしれません。それどころか実は、共同の大浴場は温泉のようで気持ち良くておすすめです! もちろん水着などNGの、裸で入る日本スタイルです。
夕食は精進料理です。小さな器に一品ずつ盛った料理が並ぶ様子は日本らしい風情でどれも美味。仏教が殺生を禁じているので、肉・魚を使っていないそうです。素材の味を大切にしたあっさり味は、余分な贅沢を削ぎ落としているような印象で、健康に良さそう。椅子席でゆっくりいただけます。
ナイトツアーと朝の勤行に参加
遍照尊院ならではの夕食後のお楽しみが「壇上伽藍ナイトツアー」。修行の一つとして行われており、副住職が案内してくれます。遍照尊院のほぼ目の前が壇上伽藍のエリア。夜になるとライトアップされ、昼に見た雰囲気とはガラリと趣が変わります。観光客の姿はまばらで一層の静けさに包まれる中、闇夜に浮かぶ建物の朱色のあでやかなこと。どこか異世界に迷い込んだような錯覚すら覚えます。副住職による壇上伽藍の話も興味深く75分はあっという間でした。就寝は日本式に床に敷いた布団。床面が視界に入ってくるのが不思議な感覚だけど、安定感がありゆっくり熟睡できました。
翌朝は6:00起床、身支度を整えて6:30から朝の勤行に参加します(参加は自由)。朝の清らかな空気の中、遍照尊院本堂でご住職の読経が始まります。住職のよく響く声は耳に心地よく、体が共鳴するような不思議な感覚。瞑想をする人ならより深い境地に至れるかもしれません。ここでも椅子が用意されているので、正座ができなくても参加できます。
遍照尊院では修行体験として他に、阿字観と呼ばれる瞑想、仏様の形を筆でなぞる写仏なども受け付けているそうです。
2日目は奥之院など見どころを巡る
チェックアウト後は「奥之院」エリアの観光へ。「壇上伽藍」は荘厳なお堂が並び修行道場のような所であるのに対し、「奥之院」は弘法大師が今もそこで瞑想を深めておられるという霊気あふれる場所。木立がうっそうと茂る2㎞の参道を進めば御廟橋という橋に至り、ここから先が御廟のある聖域。撮影禁止で、身なりを整えてから一礼して橋を渡るのが礼儀だそうです。ちょうどお坊さんが木の箱を担いで御廟へと向かう所に遭遇しました。弘法大師にお食事を運ぶ毎日の行事だそうで1200年欠かさず続いているとか。仏教の深淵を覗いた思いです。
奥の院を後にしたらランチやお土産探しへ。高野山にはお寺に混じって食事処やカフェ、お土産屋さんも豊富で、その多くが英語メニューなどで対応してくれます。日本の雰囲気を満喫しながら、ストレスフリーで旅を楽しめるのはうれしい所です。
仏教の現場「寺」に泊り、思い描いていた日本らしい生活に触れられたのは楽しい経験でした。ナイトツアーや朝の勤行もいい思い出になります。関西に来るのなら、大都会の大阪からたった1.5時間で来られる神秘的な別世界・高野山は、ぜひ訪れるべき場所の一つです!