私が日本に20年以上住んでいると人々が聞くと、彼らはいつもこう言います「ワオ!本気で日本に恋しているに違いない!」と言います。確かに、誰もがそう思うように日本とその文化、人々は好きですが、私にとっての日本との関係は「ロマンス(恋愛関係)」というよりは「ブロマンス(兄弟関係)」であると思えます。そう、恋愛関係では、全てが完璧です-バラ色、幸せ、そしてあなたのパートナーは間違いを犯すことはありません。しかし兄弟関係であれば、そこにはほころびもあるし、時にはギャップもあるし、たとえ大きな欠陥があったとしても、それを受け入れて流してゆきます。悪い面を見るよりは良い面を見る方が建設的だからです。ですから私が日本がどれほど優れているかという包括的な発言をすることは決してないでしょう。私も皆さんと同じで、日本との関係には良い面、悪い面があり、改善しないといけないことがある事も十分に承知しています。そして20年間、可能な限りその良し悪しを修正するために最善を尽くしてきた結果、私の頭をレンガのように硬くならず、とても柔らかさを保っていられているのかもしれません。私は日本と非常にうまくやってゆけている事に喜びを感じてます。日本が間違いなく世界のどこよりも優れていることの1つが風呂文化です。
東京の中心部にある小さなワンルームから最高の5つ星リゾートまで、日本の生活体験はお風呂を中心に展開していることは間違いありません。入浴と純粋さ、清潔さは、敬虔な日本の神道の始まりにまでさかのぼることができます。 異国人が日本に来訪し始めた1000年以上前の記録では、日本人の完璧なまでの衛生状態と、異国の野蛮なまでの衛生状態の比較が記されています。今や日本の風呂文化が世界中で究極のステイタスにまで進化したいるのも不思議ではありません。典型的な日本のお風呂とそのすべての周辺要素を簡単に見てみましょう。最も基本的な家でさえ、バスルームは完璧なる個室空間です。静けさを乱したり、潜在的な生物学的危険をもたらすようなトイレや流しは決して同居してはなりません。スペースが限られている都市部でのみ、トイレがバスタブと同じ部屋に組み合わされることもありますが、これは誰もが作りたくない犠牲であり、「バストイレ別(別)」のステイタスは、例え苦学生であったとしても住宅選択の際に条件提示をします。「O-Furo-Ba(文字通り入浴場所)」は、自己完結型の防水ユニットです。扱いにくいシャワーの流れがタオルや貴重な壁紙を濡らしたり、お風呂が溢れて階下の隣人が漏水してしまう心配をする必要はありません。お風呂の水はお風呂にとどまります。これは入浴の最大の喜びのひとつを提供します-ほぼ満杯の浴槽に足を踏み入れ、あなたの体があなただけのお湯の津波を作り出し、お湯が浴槽を越えて流れ出す光景です。泡で完全に満たされた西洋式の浴槽は清潔からは程遠く、温水浴槽のみで経験できる喜びです。
また日本のお風呂に入ると、お風呂の横に自分で洗うスペースがあることに気づきます。もちろん透き通った水に入る前に、すべての汚れを洗い流したくなるでしょう。お風呂で自分を洗う西洋の方法は日本人にとってもしかしたら史上最大の不可解なことかもしれません。つまり、なぜ自分の体を洗ったお湯に浸かりたいのでしょうか?!もう一つの凄いところは、掃除中に座る専用の椅子です。シャワーを浴びている間は立ち上がらず、座ったままで体を洗うことが出来て、この体験の素晴らしさははかり知れません。また、風呂桶も素晴らしい。これを使って浴槽のお湯を使ったり、体を洗っている間にシャワーヘッドを下向きにして風呂桶にお湯を溜めておけます。まさに水の無駄遣いを防ぐ知恵。そして体を洗った後に、その温かいお湯で体を注ぐ快感。まさにかつてアメリカで流行ったハンドドリップ型のコーヒーメーカー「ポアオーバー」がシャワーヘッドと風呂桶になったかのような感覚です。そして、綺麗になった体と共にいよいよ浴槽に入ります。西洋とは風呂形状の違いがあります。日本の場合、少し深く、わずかに長さが短いのです。つまりこの構造により完全に体全体がお湯に浸かれるのです。あごまで浸かるのが理想的です。もし浴槽が浅くて長かったら上半身と足が浮力で浮かび上がってしまい、お湯には浸かれないのです。
「そういえばお風呂にお湯を入れることって話したことがないね」と自問する人もいるかもしれません。まあ、実際に私はしたことがありません。日本の浴槽は温度を設定してボタンを押すと10分後に適温で所定の深さまで自動的に満たされます。冷水を加えて適温に調整したり、浴槽を塞いで熱くしたり、途中で冷やしたりする必要はもうありません。そして、仮に20分以上ビデオに夢中になってお風呂を完全に忘れてしまったとしても、お湯が溢れ出すようなことはありません。
そして温泉です。特に露天風呂。屋外で入浴する体験は最高です。大自然に包まれる、凍るような寒さの中、外に出て雪の降るなかで風呂に入る。言葉では言い表せない感動です。ぜひ体験してみてください。
執筆者 ショーン・ニコルズ