コラム
天下の台所、外せない関西料理
独特な味と文化 関西の料理
関西地方は、よく天下の台所と呼ばれています。伝統料理のほとんどが古の都、京都や奈良を中心に発展したためです。その新鮮な食材は、関西周辺の和歌山県、兵庫県、徳島県の太平洋の海産物や、鳥取県、福井県の日本海の魚・カニ・海藻や、滋賀県、三重県の野菜・穀物・豆類などが関西の食文化に大きな影響を与えてきました。
関西地方はお茶とお酒の産地としてもよく知られており、この両飲料が伴う豊かな文化は全国に広まる前にここで誕生しました。関西はまた、日本の伝統的な高級料理である懐石料理など、見た目も美しく、芸術的な日本料理を提供することで有名です。料理はそれぞれが少量で、種類も様々あり、新鮮な季節の郷土料理です。洗練された伝統的な旅館や、懐石料理のお店、セレモニーなどで賓客のお祝いの席などで出されます。舌だけでなく目も楽しませてくれ、その味の幅は関西と同じくらい広いのです 。
関西の料理
海女さん
日本は魚介類が豊富な国です。また、神々を魅了したという魚介類を実際に体験するために、伊豆半島に向かっていくと、三重県や和歌山県に神聖な地域があり、そこは女性ダイバーが2000年以上にわたり営んでいる海女漁で知られています。
海女さんはスキューバ用の道具を使わずに素潜りで深いところまで潜ることができ、カキやサザエなどの貝類や、海藻、伊勢海老などを採集します。この収穫した海の幸は海女さんが営んでいる浜辺の海女小屋で食べることができ、海女さんが浜焼きでもてなしてくれます。
この地域独自の体験は、交流だけではなく、アレンジされた食事にあります。昔の潜水技術の必要性が減少するにつれ、海女さんの数も減少しているのです。50年前は約5000人いましたが、 現在は100人以下しかいません。伊豆半島で獲れた新鮮な海の幸を味わいながら、歴史や迷信についてや、伝統的な磯テヌグイや潜水服に刺繍された魔除け印などを学び、海女文化に触れることができます。
海女小屋
牡蠣
越前ガニ
海鮮と言えば、福井県の越前ガニ(大きくて身が詰まっていて甘い)は、「冬の味覚の王様」とも言われ、冷たい日本海で水揚げされてからすぐに提供されます。福井県では、「かに見十年、かに炊き一生」という言葉があり、基本的にカニの目利きが出来るまでに10年、カニを正しく炊きあげるまでには一生かかるという意味がありますが、福井の人々は両方ともほぼ習熟しているのです! はさみに付けられた黄色いタグが本物の福井の越前ガニだということを証明しています。
松葉ガニ
同じく、近くにある鳥取県はカニの捕獲量が日本一で有名で、地元の松葉蟹(ズワイガニ) はカニ大国日本で一番の味です。プランクトンが豊富な鳥取沖の海は穏やかで、海底が砂地です。この環境が身がたっぷりで脚が長く、堅い殻のカニを生むのです。11月から3月にかけてが旬で、鳥取の堺港市のカニが一番です。現地では刺身、煮物、焼き物、または鍋料理のメイン食材として提供されます。もし冒険心があれば、メインのカニの甲羅の内側に、日本では珍味とされる、かに味噌(またはカニの中身として少し苦い深緑色のペースト)を体験してみて下さい!これは日本人にとって、お宝とされており、鳥取と福井を訪れる際には挑戦してみる価値はあります。
松葉ガニ
禅のコース料理
精進料理は粗食な菜食料理で僧侶や修行僧が食しており、多くの専門店でもよく見られますが、本物を体験するならその地域のお寺などで、簡素な禅コースをお寺の生活体験と一緒にできます。また、お寺に宿泊して禅を体験し、お寺維持のために簡単な雑務などのお手伝いや、お坊さんのシンプルな食事に参加することができます。それは本当に奥が深く、ユニークな体験であり、強くお勧めします。
豆腐と湯葉
関西地方全域、特に京都周辺には豆腐や湯葉の専門店がたくさんあり、特にベジタリアンの方は食べてみる価値があります。特に湯葉は京都の名物料理で、豆腐を作る工程でできる豆乳から作られます。湯葉は生の状態で、ポン酢(できれば柚子が入ったもの)か醤油で食べるのが最適で繊細な風味があります。冬は温かくして、夏は冷たくして一年中味わうことができます。
寿司は今や世界中で人気がありますが、鮒寿司と呼ばれる独自の寿司は滋賀県の琵琶湖の鮒を使ったことが起源です。鮒の切り身に、塩とご飯を詰めて漬け込み、数ヶ月かけて発酵すると、強烈な臭いで特有の風味を造り出すのです。
鮒づくし
神戸ビーフ
もしお肉がお好みであれば、世界的に有名な兵庫県の、霜降り神戸ビーフがあなたの好みに合うでしょう。牛は人の手で育てられ、肉をやわらかくするためにマッサージをしたり、ビールを与えたりします。他の国で食べられてる赤身肉よりも濃厚で、季節の野菜と一緒にすき焼きやしゃぶしゃぶにしたり、お刺身にしたり、あるいは一番おいしい鉄板焼きのステーキとして提供されています。
すきやき
伝統に変わるもの
伝統料理を試してみるのは良いことの一方で、普通の旅行者はその「異なった」食べ物の慣れない味に疲れてしまい、「違うもの」を食べているという挑戦がつまらなく、面倒になってしまうのです。すでに述べたように、京都と奈良の料理は食欲をそそるだけでなく視覚的にも魅力的であるため、料理芸術という一言に尽きます。 一方で、大阪の食べ物は気取らなくてもいいのです。
大阪は少し騒々しく、優雅で上品な京都や奈良と比べると親しみやすい従兄弟のような所です。大阪には独自の食文化があり、イギリスのフィッシュ&チップスや、アメリカのハンバーガー、またオーストラリアのチコロールとほとんど大差ありません。大阪の食べ物は、日本の「ソウルフード」としてよく認識されています。その理由から、外国人好みの味に適していて、似たり寄ったりな伝統食材の味からひと休みすることができます。
串揚げは、豚肉、牛肉、鶏肉、または魚、エビ、ホタテなどの魚介類、キノコ、レンコンなどの野菜を串に刺して油で揚げた物です。テーブルにはソースの容器があり、それに付けて食べます。忠告しておきますが、気軽な雰囲気にもかかわらず守るべきマナーがあり、ソースは二度付けしてはいけないのです。
たこ焼きとは…たこボール、またはたこ団子! 恐れることはないです! 私は訪日外国人の男性が、たこ焼きの上に散りばめたかつお節が、湯気で動いているのを見て飛んで後ずさりしたところを見たことがります。生きていると思ったのでしょう。たこ焼きは、茹でてぶつ切りにしたタコを、おいしい球状の生地に入れて焼き、たっぷりのソース、マヨネーズ、青のりと鰹節をふりかけてつくる、ザ・関西の味です。シーフード味で、ぷりぷりとしたエビやロブスターとよく似ています。 少なくとも生ではなく冷たくもないです。 タコの印象を乗り越えることができたら、たこ焼きは本当にとても美味しいですよ!
お好み焼きは、塩味のついたパンケーキみたいなもので、肉、魚介類、野菜など好きな具を入れて混ぜ合わせた生地を鉄板の上で焼いたものです。たこ焼きのように、たっぷりのソースやマヨネーズをかけて、青のりをふりかける。 もっと食べたくなって翌日の夜に戻ってくることでしょう!
大阪の食文化
たこ焼き
お好み焼き
関西で乾杯
食べ物には、何か飲み物が必要です。日本酒は、国際的な関心の高まりから国内でその良さが見直されており、関西圏に注目が高まっています。現存している最も歴史のある会社の1つ、京都の伏見に拠点を置く月桂冠は、1637年以来、日本酒を生産している伝統的な酒造店です。月桂冠は独自の展示館と見本の蔵があり、醸造プロセスが分かるようになっています。
大阪と神戸の間に位置する、兵庫県の灘五郷は、西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷があり、日本の酒の生産量の約30%を占めていると言われています。神戸の象徴的な山、六甲山の湧き水はミネラル分が高いため、ほとんどの伝統料理に合う辛口のお酒ができるのです。この地域にも多くの酒造が独自の資料館を設けており、白鶴酒造が国内上位にその名を上げています。オンラインで見ると、関西地方のさまざまな酒蔵とその体験ツアー見つけることができ、この人気ある日本の飲み物に対する理解と評価を高めることができます。酒蔵見学の多くは、日本の体験をより楽しめるように日本酒を飲む文化や正しい飲み方、礼儀作法について解説し、「乾杯」から初めます。
お茶は日本の文化の象徴の一つです。日本人は1,200年以上にわたりお茶の味と健康効果を楽しんでおり、一杯のお茶を飲むという単純な喜びを、上品で賞賛される芸術形式へと高めました。京都の貴族や関西地方の武士などによって、文化全体が茶道中心に発展を遂げ洗練されました。特に力のあった武将・豊臣秀吉の下で形成されたのです。濃厚でコクのある抹茶は、かなり苦いこともあり慣れるには少し時間がかかるかもしれませんが、その味だけではなく、伝統的な茶道に参加するという経験があなたの心に長く残るでしょう。
日本酒
抹茶と和菓子
京都の閑静な庭園での優雅な茶会、日本海沿岸の新鮮なカニ、高級鉄板焼きレストランで焼く神戸ビーフのステーキ、三重の海辺の海女さんが獲った魚介類、または大阪の大衆酒場での賑やかな酒宴など。関西には、たくさんの見るもの、たくさんの体験、たくさんの食べものがあります!
※この内容は、オリジナル英文を翻訳した文章です
Writer
クリス・グレン ライター / インバウンド観光アドバイザー
オーストラリア出身。93年より名古屋市在住。
英語と日本語を使いこなすバイリンガル ラジオDJとして活躍するほか、日本の魅力を語る外国人としてNHK「ブラタモリ」などテレビ出演も多数。オーストラリアではコピーライターとして活躍し、10,000本以上のCMを手がけた。
近年は、訪日外国人の受け入れ環境整備、地域の魅力の掘り起こしと磨き上げ、外国人目線での情報発信に関するアドバイス等を行う、インバウンド観光アドバイザーとしても活躍中。外国人のニーズやセンスにマッチした英文ライティングにも定評があり、観光関連の情報誌や自治体、DMO等の運営するWEBサイトへの執筆も多数おこなっている。
著書に「城バイリンガルガイド」(小学館)、「豪州人歴史愛好家、名城を行く」(宝島社)、「The Battle of Sekigahara」(英語版)がある。