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姫路から鳥取へ:隠れた城下町、温泉、そして妖怪ストリートの旅

姫路から鳥取へ:隠れた城下町、温泉、そして妖怪ストリートの旅

最終更新

多くの旅行者は、日本海側と太平洋側でこれほどまでに雰囲気が異なることに気づいていません。
太平洋側には、姫路城のように白く輝く名城や、にぎやかな都市が並びます。一方、山を越えて鳥取へ入ると、空気がひんやりと変わり、時間の流れがゆるやかになり、倉吉や境港のような町では民話や妖怪の世界が息づいています。
この2日間の旅は、姫路から鳥取へと続く「隠れた城下町」を巡りながら、武家文化が花開いた地が、いかにして伝統工芸や民話に彩られた文化的な町へと進化してきたかをたどります。

1日目:白鷺城から赤瓦の町・倉吉へ

姫路城 : 白鷺が羽ばたく城(兵庫県姫路市)

空に白鷺が舞い上がるようにそびえる姫路城は、日本で最も完全に近い姿で残る城です。江戸幕府を開いた徳川家康の娘婿であった池田輝政によって1609年に築かれたこの城は、江戸時代の建築技術と軍事設計の傑作です。

現在はユネスコ世界遺産にも登録され、築城以来、大きな戦火を受けることなく現存している数少ない「本物の城」です。白壁が陽光を受けてまばゆく輝く一方で、内部は敵を惑わせるため複雑に曲輪が張り巡らされています。

屋根瓦には、かつての城主たちの家紋が見られ、なかでも蝶を模した「池田氏の家紋」が今も優美に残っています。

姫路城は実戦を経験していないものの、矢狭間や石落としなどの構造から、戦いへの備えの周到さを感じられます。

6層の天守閣を登れば、南には瀬戸内海、北には播磨の山々が一望できます。

スーパーはくと:山と物語を越えて(兵庫県姫路市~鳥取県倉吉市)

姫路城をあとにするとき、思わず振り返りたくなるほどの美しさ。
けれども、このあとに待つ姫路〜倉吉ルートには、また別の日本の魅力が広がっています。

姫路駅からスーパーはくとに乗り、2時間ほどで山陰・倉吉へ。
京都や大阪に観光客が集中する一方で、鳥取県を訪れる外国人は全体の1%未満。
その中でも倉吉に足を運ぶ人はごくわずかです。
しかし、ここには江戸の面影と職人の技が今も息づく、静かで美しい町並みが残っています。.

倉吉:白壁土蔵の町(鳥取県倉吉市)

鳥取県中部の倉吉市は、白壁の土蔵と赤瓦屋根が水路沿いに並ぶ、西日本でも屈指の保存地区です。

この町はもともと、姫路城を築いた池田家の鳥取藩支藩によって整備された城下町・商人町でした。
戦火や大火を逃れたため、江戸時代の町並みが奇跡的に残っているのです。

今も古い酒蔵や織物工房が営業しており、訪れる人は当時の暮らしや手仕事を感じることができます。

倉吉絣:山陰が誇る藍染の伝統(鳥取県倉吉市)

「倉吉ふるさと工芸館」では、江戸時代から伝わる倉吉絣(かすり)づくりを今も見ることができます。

藍のやわらかな色合いと、細やかな幾何学模様が特徴のこの織物は、かつて日常着として親しまれました。

その美しさの秘密は、染めに使う「山の湧水」。
綿花の栽培にも適した穏やかな気候のもと、倉吉は織物産地として発展しました。
館内のショップでは、伝統技法で織られた小物やストールも販売されています。

工房では、糸を染め、結び、織って模様を生み出す工程を体験することもできます。

館内のショップでは、伝統技法で織られた小物やストールも販売されています。

はこた人形工房 (鳥取県倉吉市)

工芸館から歩いて数分のところにある「はこた人形工房」でも、この町の手作りの技が受け継がれています。

小さな工房の中では、熟練の職人が訪れた人々を招き入れ、鳥取の山々で採れた滑らかな地元の木材や和紙を使って、自分だけの張り子人形を絵付けする体験ができます。

地元の材料を使い、筆で表情を描くと、なぜかどこか自分に似ている表情が現れます。
職人いわく、「みんな自分に似せて作るんですよ」とのこと。

皆生温泉:海辺に湧く癒しの湯(鳥取県米子市)

夕方には、海沿いの温泉地・皆生温泉(かいけおんせん/鳥取県米子市)へ。
日本海を望むこの温泉は、美肌の湯として知られ、入浴後は肌がすべすべに。

数ある旅館の中でも「皆生風雅(かいけふうが)」は、木の温もりと上質な空間が魅力。
海の幸を味わいながら、湯に浸かる贅沢なひとときです。

2日目:城跡から妖怪の町へ

米子城跡:鳥取屈指の絶景(鳥取県米子市)

皆生温泉で穏やかな夜を過ごした後、姫路から鳥取への旅程2日目は、鳥取県西部の玄関口のひとつ・米子市から始まります。
温泉街から車でわずか20分足らずの場所にある米子城跡は、市街地の中心にそびえ、日本海沿岸でも屈指のパノラマビューを楽しめる場所です。ここからは大山や中海、そして米子から境港へと続く海岸線全体を一望することができます。

米子城は、戦国時代の終わりごろに、毛利氏の家臣・吉川広家によって築かれました。
日本海の海上交通を掌握し、山陰地方の海岸線を防衛するために設計された城でした。

明治維新後の1873年、日本各地の城は解体を命じられ、米子城の木造天守も取り壊されました。
現在に残るのは、その壮大な石垣のみです。

現在もその石垣は見事に原形を保っており、登ると米子の街並みと日本海を一望する絶景が広がります。
鳥取県内でも屈指の景観を誇る歴史スポットです。

岡本一銭屋:米子城下町に残る懐かしの菓子店(鳥取県米子市)

城山を下り、米子の旧商家町に足を踏み入れると出会えるのが「岡本一銭屋」。
明治時代後期から続く、地域に長く親しまれてきた駄菓子屋です。

木造の店構えや色あせた看板、色とりどりの駄菓子が詰まったガラス瓶——その光景を目にした瞬間、訪れた人はまるで昭和の時代にタイムスリップしたかのような気分になります。

店内では今も気さくな店主が出迎えてくれ、昔と変わらず、親子連れの地元の子どもたちでにぎわっています。
世代を超えて愛され続けてきた、まさに地域の原風景のような場所です。

昼食は「峰」で:海の幸を味わうひととき(鳥取県境港市)

岡本一銭屋で郷愁に浸ったあとは、日本海沿いの美しい道を西へ30分ほど走り、境港方面へと向かいましょう。

昼食は、境港の港近くにある地元で長年愛されてきたお食事処「峰」に立ち寄りましょう。
季節ごとにメニューが変わり、その日の朝に日本海で獲れた新鮮な魚介類が味わえます。

名物料理には、新鮮な刺身盛り合わせ、焼き魚や貝を使った味噌汁などがあり、鳥取の海沿いの食文化を存分に味わうことができます。

日本の「妖怪ストリート」とゲゲゲの鬼太郎の世界(鳥取県境港市)

米子から境港へ足を踏み入れると、街の雰囲気が再び変わります。
この鳥取県の静かな港町は、日本の古い民間伝承を漫画『ゲゲゲの鬼太郎』で現代に蘇らせた伝説的漫画家、水木しげるの出身地です。

全長800メートルの「水木しげるロード」には、妖怪やキャラクターをかたどった178体以上のブロンズ像が、ありとあらゆるポーズで街道沿いに並んでいます。

それぞれのブロンズ像は驚くほど精巧に作られており、日本各地で語り継がれてきた妖怪の伝説と結びついています。
街路灯にさえも、妖怪のシルエットがあしらわれています。

地元の商店では、「ゲゲゲの鬼太郎」のお菓子やブレンドのコーヒーなどが売られ、街中にはゲゲゲの鬼太郎の楽しい音楽が流れています。

妖怪工房と妖怪未来ポスト(鳥取県境港市)

水木しげるロードにある「手作り妖怪工房」では、単なる絵はがき以上の体験が楽しめます。
ここでは、ねずみ男、目玉おやじ、鬼太郎などのかわいいデザインの中から好きなものを選び、色を塗ったり装飾を施したりして、自分だけの絵はがきを作った後にメッセージを書くことができます。

カウンターでは、作ったはがきに境港限定の妖怪消印が押されてから郵送されます。
これは、この町からしか送れないちょっと特別なお土産です。

店内には、遊び心あふれる「妖怪未来ポスト」が立っており、手紙を未来の自分に届けると言われています。
5年後のちょうどお盆の頃、日本の夏の祭りで霊がこの世に戻ってくる時期に届くのだそうです。
訪れる人の中には、叶えたい夢を書き込む人もいれば、未来の自分への励ましの言葉を送る人もいます。さて、あなたなら5年後の自分にどんなメッセージを送りますか?

二つの世界の間で:姫路から鳥取へ

姫路から鳥取へ旅するのは、まるで二つの異なる日本を行き来するかのような体験です。
姫路では、ユネスコ世界遺産にも登録されている姫路城の真っ白な壁が、日本屈指の城郭建築の技を見せつけます。

日本海に向かって北上すると、倉吉、米子、境港といった歴史ある町々に出会います。
江戸時代の街並みや城跡、民間伝承の文化が、鳥取県の静かで落ち着いた一面を教えてくれます。

もしこのような旅に心惹かれるなら、「関西の城たび」シリーズの他のルートもぜひチェックしてみてください。それぞれの旅が、日本の変わらぬ心を映し出すもう一つの物語を教えてくれます。

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