香美町の三番叟
2021年12月26日
(かみちょうのさんばんそう)
兵庫県 関西
県指定重要無形民俗文化財
日本海に面し、美しい自然と海岸線を持つ兵庫県香美町。 躍動感ある力強い祈りの舞を7つの地区が披露する。
「香美町の三番叟」と呼ばれる香美町7地区の「三番叟」は、地域の人びとに「さんばんそう」と呼ばれ、受け継がれている伝統芸能です。節回しや細かな動作など各地区で異なり、その違いも見ごたえがあります。町内面積の約6割が自然公園区域に指定されている兵庫県香美町。町の北側、日本海に面した香住区は、山陰有数の漁港である香住港を有し、香住ガニ等の水産品でも有名な漁師町かつ、商業施設や行政施設が集結した香美町の中心地でもあります。そして町内全域が山陰海岸ジオパークに含まれており、切り立った断崖や火山岩など、貴重な地質遺産が数多く残っています。
五穀豊穣を祝う重要無形民俗文化財の「香美町の三番叟」は 香住区内6地区と小代区内1地区の計7地区で毎年秋に奉納される。
五穀豊穣を祝う伝統芸能「三番叟」。「三番叟」そのものはさまざまな地域で行われていて「翁舞」とも呼ばれ、もともとは呪術的な性格の舞です。起源は室町時代にさかのぼり香美町では江戸時代中期ごろには舞われていました。「とうとうたらり、たらりら…」という独特の地唄で始まり、村おさをイメージした翁や若者の千歳、農民がモチーフの黒木尉の3役が登場し、謡、笛、鼓、拍子木のリズムに合わせ、舞台を踏むような力強い舞を奉納します。
兵庫県北部に位置する香美町では、香住区内6地区(一日市、香住、森、下浜、訓谷、沖浦)と小代区内1地区(新屋)の計7地区で「三番叟」が伝承されており、2018年にはこれらを一括して「香美町の三番叟」と称し、兵庫県の重要無形民俗文化財に指定されました。
毎年10月の秋祭りで香住神社に奉納される「三番叟」 舞を披露する少年たちは祭りの約1か月前から稽古に勤しむ。
ひとつの地域にこれだけまとまって「三番叟」が伝承されているのは全国的に珍しく、かつ、通常の呼び名である「さんばそう」ではなく、「さんばんそう」と呼ばれているのも特徴的。また、能の翁舞をルーツとする「香美町の三番叟」ですが、小代区新屋だけは歌舞伎の流れを組んだ「二人三番叟」が伝わっています。
毎年10月に各地区の秋祭りで香住神社に奉納される「香美町の三番叟」。舞の大きな流れは変わりませんが、節回しや細部の動作が地区ごとに異なっているのも見どころです。翁、千歳、黒木尉の3役の舞い手を少年が務めるところが多く、この地域の少年たちは本番の1カ月以上前から稽古を始め、当日までほぼ毎日行っています。地元の人びとの伝統芸能への熱は高く、その思いは親から子へ、連綿と受け継がれています。また、香住三番叟では秋祭りの前日には朝9時ごろから夜7時過ぎまで、香住自治区長や香住神社代表総代、踏み子らが新築や出産、商売繁盛などの祝い事のある家で「三番叟」を奉納する「町周り」も行われています。
自然の力が生み出したダイナミックな光景のジオパークや ドラマのロケ地としても有名な海岸沿いの駅など観光スポットも豊富。
日本海側に面した香美町香住区は山陰海岸ジオパークに含まれており、高さ約70m、幅約200mにわたり崖面に柱状の岩が無数に並ぶ国指定天然記念物「鎧の袖」や、「鎧の袖」が侵食されてできた奇岩「鷹の巣島」、孔雀が羽を広げたようなシルエットが浮かびあがる「くじゃく洞門」など、絶景が連なります。これらジオパークや香美町の魅力をより知りたい方には「ジオパークと海の文化館」もおすすめです。
平家伝説の里として知られている御崎地区の余部埼灯台は、日本一高い場所にあることで知られ、西は鳥取県東郷町、東は京都府の経ヶ岬まで光が届くことが自慢です。ここは日本の夕陽百選・香住の夕陽スポットの一つにも選ばれました。また、「鎧の袖」にちなんで名づけられた海岸沿いの鎧駅は、テレビドラマ「ふたりっ子」や「砂の器」などのロケ地としても有名で、旧1番線ホームからは眼下に広がる鎧漁港の絶景が楽しめます。
そのほか、江戸中期の画家の円山応挙(まるやまおうきょ)とその一門の襖絵などが残る別名「応挙寺」とも呼ばれる大乗寺も訪れたいスポットの一つ。客殿13室に応挙とその門弟12名が手掛けた障壁画165面があり、国の重要文化財に指定されています。
このように香住区には日本海がもたらした自然のアートや、江戸時代を代表する絵師の作品など、訪れてみたいスポットが多数点在。そのパワーをぜひ、現地で実感してみてください。
画像提供:兵庫県/香美町/(公社)ひょうご観光本部